京都御所内の安政期杉戸絵に使用された画材及び制作技法の総合的研究

2020 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 17H02308
• 研究機関: 嵯峨美術大学
• 研究代表者: 仲 政明 嵯峨美術大学, 芸術学部, 教授 (50411327)
• 研究分担者: 佐々木 良子 嵯峨美術大学, 芸術学部, 講師 (00423062) ; 田中 重光 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 主任研究員 (20509822) ; 山内 朝夫 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 主任研究員 (80416304) ; 山内 章 桃山学院大学, 国際教養学部, 客員教授 (90174573) ; 箱崎 睦昌 嵯峨美術大学, 芸術学部, 名誉教授 (90351379) ; 木曽 太郎 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究室長 (90416313)
• 研究期間 (年度): 2017-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: 模写 / 安政期 / スマルト / プルシャンブルー / 秋田蘭画 / 古典絵画

研究実績の概要

計画では本年度はデータ整理を中心に行う予定であったが、開始当初購入機器の不具合などで出遅れ、また研究途中で新型コロナウィルスが発生したことにより、幾度となく調査対象の変更を余儀なくされた。そのため、本年度はデータの整理及び建造物文化財を含めた安政期以外の作品についても可能な範囲で調査を行った。
具体的には本研究テーマの一つであるプルシアンブルー、スマルトの顔料を中心に分析を行い幾つかの知見を得た。今年度調査した作品は、絵画は沖縄美ら島財団所蔵「闘鶏図」３幅、二尊院所蔵「阿弥陀来迎図」１７幅、建造物は「十八神社本殿彩色」「石神神社本殿彩色」「叡福寺多宝塔内部彩色」で全て重文指定されている。また研究対象外ではあるが、「昭憲皇太后大礼服」の装飾品分析を行った。尚、昨年度調査を行った沖縄美ら島財団所蔵「神猫図」及び小野田直武筆「生花図」の研究成果については、2020年度文化財保存修復学会で研究発表を行った。2021年度文化財保存修復学会では、「昭憲皇太后大礼服」について研究発表を予定している。
今年度の研究成果の一つとして、叡福寺多宝塔内部彩色にスマルトが使用されていることがあげられる。多宝塔は1652年建立であり、一部補彩が認められるが、状況から当初彩色と考えられており、青色部分からCo（コバルト）が検出された。スマルトは古代からエジプトなどで用いられているコバルトガラスで、歴史の古い人造顔料の一つである。東洋においても中国唐時代から釉薬として多く用いられている。また絵画ではルネサンス期以降絵具として用いられており、日本においては狩野派等の文献に「花紺青」として現れる。江戸時代には用いられていたと推測されるが、使用例としては江戸後期の建造物や絵画に多く、江戸初期の使用例は少ない。今回、大量に必要とする建造物彩色に使用されていることは、今後のスマルト研究に大きく寄与すると考える。

現在までの達成度 (段落)

令和2年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

令和2年度が最終年度であるため、記入しない。

研究成果

• [雑誌論文] Mass Spectrometric Study of Protoberberine Alkaloids in Historical Textiles Dyed with Amur Cork Tree and Related Species (2021)
  • 著者名/発表者名: Yoshiko SASAKI, Ryohei Fukae and Ken SASAKI
  • 雑誌名: Dyes in History and Archaeology 巻: 33/34 ページ: 54-61
  • 査読あり
• [雑誌論文] 文化財染織品に用いられた黄檗の成分分析を用いた劣化の指標化の試み (2021)
  • 著者名/発表者名: 佐々木良子，佐々木健
  • 雑誌名: マテリアルライフ学会 解説 巻: 33 ページ: pp.1～5
  • 査読あり
• [雑誌論文] 武永寧作「神猫図」に用いられた色材の非破壊化学分析 (2021)
  • 著者名/発表者名: 佐々木良子，仲政明，佐々木健
  • 雑誌名: 首里城公園に関する調査研究・普及啓発事業年報 巻: 11 ページ: pp.68-79
• [雑誌論文] 伝統文化の継承を目的とした醍醐寺蔵「仏涅槃図」の色料研究 (2020)
  • 著者名/発表者名: 田中直子，大林賢太郎，佐々木良子
  • 雑誌名: 粉体工学会誌 技術資料 巻: 57-7号 ページ: pp.374-380
  • 査読あり
• [学会発表] 京都工芸繊維大学収蔵品のうち衣類に関して (2020)
  • 著者名/発表者名: 西村太良，行松啓子，佐々木良子，並木誠士
  • 学会等名: 繊維機械学会日本繊維機械学会第71回年次大会（大坂）
• [学会発表] 新発見の神猫図（武永寧筆）の保存修理と色材調査報告 (2020)
  • 著者名/発表者名: 佐々木良子，上江洲安亨，関地久治，箭木康一郎，仲政明，佐々木健
  • 学会等名: 文化財保存修復学会第42回大会(熊本)
• [学会発表] 江戸時代後期洋風画の色材と技法 (2020)
  • 著者名/発表者名: 仲政明，佐々木良子，稲葉月乃，佐々木健，金子信久，音ゆみ子
  • 学会等名: 文化財保存修復学会第42回大会(熊本)
• [学会発表] 黄檗を用いた有機質文化財の劣化状態の指標化と劣化メカニズムに関する研究 (2020)
  • 著者名/発表者名: 佐々木良子，深江亮平，佐々木健
  • 学会等名: 日本文化財科学会第37回大会（別府大学）
• [学会発表] 膠の物性に影響する要因の検討 (2020)
  • 著者名/発表者名: 山内章、木曽太郎、田中重光、山内朝夫
  • 学会等名: 文化財保存修復学会第42回大会(熊本)