研究課題/領域番号 |
17H02321
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
逸見 竜生 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (60251782)
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研究分担者 |
淵田 仁 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 日本学術振興会特別研究員 (00770554)
井田 尚 青山学院大学, 文学部, 教授 (10339517)
井上 櫻子 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (10422908)
川村 文重 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 講師 (40759867)
小嶋 竜寿 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 講師(非常勤) (50704269)
隠岐 さや香 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (60536879)
小関 武史 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (70313450)
寺田 元一 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (90188681)
飯田 賢穂 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 日本学術振興会特別研究員 (90806663)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 『百科全書』 |
研究実績の概要 |
緻密な実証にもとづく本文批評校訂手法の確立は、『百科全書』基礎的研究における最大の課題のひとつとして世界の多くの研究者が注目している分野であるが、多くがなお未解明である。本研究は、18世紀啓蒙思想、科学史、人文学領域の研究者が協力しあい、欧米・韓国の研究者の協力もえて、『百科全書』編集史のわが国における初の包括的な文献学的解明を目指している。具体的には、①典拠批判により本文資料層の〈生成〉を包括的に分析するとともに、②識別が可能となった異なる資料層の断片の、テクストにおける編集的な取り扱い方(〈転位〉)を多面的に追究し、③その編集作業の背後にある『百科全書』編集意図とその史的状況との関連を総合的に明らかにするものである。 本研究が考察の焦点におくのは(1)『百科全書』項目本文の文献批判論、特に典拠となる先行文献資料の本文への累積的な取込の様態の組織的解明、(2)項目校編者による編集意図を再建し、源泉資料の再生ないし改修、転位の様態に新たな光をあてて、各々の校編者の関心や意図を包括的に明らかにする編集史的考証である。各対象巻に提示される知識分類と、その編集の全体像を明らかにし、その総体を『百科全書』項目間の内的連続性のなかに位置づける。各巻全体にみられる知識間の連関と組織化の様態を解明し、そのうちで働いている歴史的諸要因と叙述意向を、総合的に評価する。 初年度の2017年度は、国内外の研究者ネットワークの構築を諮り、欧米(特にフランス)とアジア(韓国・日本)を招聘、国際研究会、国際キックオフシンポジウムを開催するとともに、研究代表者・研究分担者・研究力者が中心となった『百科全書の時空』(法政大学出版局、2018年3月)を刊行、進行中の研究内容に関する整理と、国際的議論のための問題提起を行うなど、研究組織構築と研究手法・研究成果の公開につとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度は、(1) 研究体制・事務局体制の構築、(2) キックオフ国際研究会、(3)月例定例研究会を、以下のように実施した。(1)準備作業の実施(4 月~6 月):(i)事務局非常勤職員の採用、「キックオフ国際研究会」の準備・手配、典拠資料調査の実施準備・手配を行った。(ii)典拠資料調査実施に先立ち、調査目的と方法について共同研究者の間で検証、認識の共有と調査方針の合意を行った。(2)キックオフ国際研究会の実施(東京)7月および2月、フランスおよび韓国の研究協力者を招いて、本研究の目的と全体計画についての理解を共有、それぞれの国・地域における典拠資料調査の状況を紹介しあった。同時に、今後の国際共同研究の実施対象とすべき分野、およびその調査方法について意見交換を行った。(3)月例研究会における典拠資料調査方法についての検証、データ調査結果の報告、およびデータ整合性の確認を行った。研究代表・分担者が東京都に月例で会合をもち、担当する典拠資料に関する審議と調査、結果データの相互検証を行った(8回)。
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今後の研究の推進方策 |
2018 年度の作業目標は以下の通りである。 (1)月例定例研究会の開催。『百科全書』項目本文の文献批判論、特に典拠となる先行文献資料の本文への累積的な取込の様態の組織的解明のため、研究代表・分担者が月例で都内に集まり定期的な会合をもち、編集史観点からの調査についての研究ならびに報告会を行う。項目校編者による編集意図を再建し、源泉資料の再生ないし改修、転位の様態に新たな光をあてて、各々の校編者の関心や意図を包括的に明らかにする編集史的考証を、『百科全書』本文巻刊行史上の最初期(1751-1753)に分析を限定して実施する。これは、本文形成の動的な変容が最も活発に観察される時期であり、これら初期巻の文献批判が十分に解析される意義は大きい。このために典拠調査を継続し、2月をめどに中間報告を冊子体のかたちでまとめたい。 (2)国際セミナーの開催(東京)と編集史研究のスタート フランスおよび韓国の研究拠点の協力を得て、10月に国際セミナーを新潟、2月に京都・東京で開催、フランスと韓国の研究協力者を招き、これまで『百科全書』本文研究に累積してきた課題の解決に向けて、国際的視野に立脚して明確な方向性と指針を協議する。編集の過程で『百科全書』本文に取り込まれる際にもとの意味上の力点が、いかに転位されたか、編集史的側面に注目することでその動態的な解明を行う。これにより、『百科全書』の言説戦略の様態を、実証的に明らかにしうることが期待できる。
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