本研究は、一九八〇年代中国の思想と文化について、とくに青年たちが、時代の転換期にあたって、いかにして思想形成をとげたかを問い直し、一九八〇年代 中国を歴史的に位置づけるものである。特徴として中国キャンパス文化の解明に主眼を置いている。 本年度は研究最終年度であり、総括に重点をおいた。平成31年5月11日・12日の両日にわたり東京大学駒場キャンパスにて国際シンポジウム「長期的視点と東アジアの歴史的視点における「五・四」」を共催した。一九八〇年代の中国において「五四」の遺産はもっとも重要な課題であった。このシンポジウムは一九八〇年代中国の思想と文化を全面的にとらえ直す本研究にふさわしい内容であったと言える。シンポジウムでは、中国から14名にのぼる研究者を招聘し、日本在住の研究者とあわせて合計20人の報告によって、幅広い視野から五四の思想史的位置づけを検討した。なおシンポジウムを報告した文章として、鈴木将久「グローバル化時代の日本で「五・四」を考える」(『東方』464号、2019年11月号)がある。 同時に、資料収集も引きつづき行った。当時の大学において学生が発行した雑誌として、北京師範大学の『初航』、吉林大学の『研究生時代』を手に入れた。『初航』は当時全国で良く知られてる雑誌であったが、いままで全貌が明らかになっていなかった。また『研究生時代』も公共の図書館には所蔵されていない。どちらも貴重な雑誌である。
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