研究課題/領域番号 |
17H02332
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
五十嵐 陽介 一橋大学, 大学院社会学研究科, 准教授 (00549008)
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研究分担者 |
田窪 行則 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 所長 (10154957)
木部 暢子 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変異研究領域, 教授 (30192016)
平子 達也 駒澤大学, 文学部, 講師 (30758149)
佐々木 冠 立命館大学, 言語教育情報研究科, 教授 (80312784)
松浦 年男 北星学園大学, 文学部, 准教授 (80526690)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歴史言語学 / 比較言語学 / 少数言語 / 琉球語 / 系統論 |
研究実績の概要 |
日本語・琉球語の共通の祖先である日琉祖語の再建を行うとともに、日本語・琉球語(日琉語族)の諸方言の系統樹を構築する目的のために、平成29年度は、主として、方言データの拡充と、今後の研究のたたき台としての系統樹の提案を行った。 方言データを拡充するための指針となる調査語彙票は2種類ある。1つは、研究代表者が2006年に発表した日琉祖語に遡ると考えられる約1,300の同源語のリスト『日琉語類別語彙』であり、もう1つは九州諸方言と琉球語諸方言のみが共有する同源語のリスト『日琉語類別語彙』である。前者は、アクセント型の対応に基づいて諸方言の系統樹を構築するために利用されるデータベースであり、後者は琉球語と九州方言とが姉妹関係にあるとする仮説を検証する目的のために、研究代表者が平成29年度に作成し公開したものである。この2つの調査語彙表を利用して、研究分担者と協力者は、日本本土および琉球列島でフィールド調査を行い、データを拡充した。 日琉語族の系統樹を構築する目的のために、『日本言語地図』(LAJ)のデータの一部を分岐系統学的手法に基づいて分析し、今後の研究のたたき台としての系統樹を提案した。この系統樹は、九州諸方言と琉球語諸方言からなる「南琉球語派」、八丈方言と東日本諸方言を含む「東日本語派」と「その他」からなる。この系統樹の妥当性を検討するために研究分担者・協力者、および外部の研究者を招聘し研究会を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、予定通りデータの拡充を進めることができたうえ、日琉語族の系統樹の一案を提案することができた。平成29年度はデータの拡充に重点を置いたため、(全国規模の)学会発表や論文の形で成果を公表するには至っていないが、平成30年度以降は、順次成果を公表してゆく予定である。したがって研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、フィールド調査に基礎を置いたデータ収集を行い、データベースの拡充を行う。また『日本言語地図』(LAJ)の電子版が国立国語研究所から平成30年度中に順次公開される予定であるので、このデータの分析を行う。 また平成30年度より、古形/改新形の評価、借用・並行変化の評価、および同源性の評価を本格的に開始する。方言Aと方言Bが、それぞれ異なる特徴p1, p2を有しているとき、p1とp2のうち一方が古形で、一方が改新形となるが、その判断は必ずしも容易ではない。また、方言Aと方言Bとが同一の特徴p3を有しているとき、p3は、方言Aと方言Bの共通祖語から受け継いだ特徴である可能性と、方言AからBへの、あるいはその逆の借用語である可能性と、方言Aと方言Bとが独立かつ並行的に、同じ変化過程を経た結果である可能性とがある。その判断も常に容易であるとは限らない。したがって、研究者が項目ごとに古形と改新形の峻別、借用、並行変化の可能性の検討をしなければならない。さらに方言間では意味が異なるが語形が酷似している語とが同源語なのか否かも先験的に決められず、同源性の判断には十分な考察を要する。これらは、方言学、文献学、日本語史、琉球語史に関する深い知識を必要とする。この作業はこれまで本格的に行われてこなかったため、その方法についても同時に議論し、開発、整備していかなければならない。その比較言語学的考察を平成30年度に集中して行い、問題点を洗い出して、平成31年度以降の作業を決める。 12月に、海外および国内の研究者を招聘し、第2回の研究会を行う。
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