研究課題/領域番号 |
17H02341
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
豊島 正之 上智大学, 文学部, 教授 (10180192)
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研究分担者 |
白井 純 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (20312324)
丸山 徹 南山大学, 人文学部, 教授 (40165949)
岸本 恵実 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (50324877)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | キリシタン文献 / 宣教に伴う言語学 / Missionary Linguistics / ラテン文法 / ポルトガル語文法 / キリシタン語学 / contemptus mundi / konkani |
研究実績の概要 |
1)翻訳原典の比定とローマ字本の解釈 : 新たに存在が確認された「コンテンツスムンヂ」(1596)のHerzog August Bibliothek(ドイツ Wolfenbuttel)本を原本調査し、既存2本の再調査も行なう事で、ローマ字本本文の詳細な記録を完成した。(来年度に論文として出版予定)。又、原典候補であるスペイン語版諸本の調査も併せて進めた。 2)イベリア半島の辞書・文法書類の電子化とデータベースとしての公開・学術成果の公刊・国際学会での発表 : 日本イエズス会文法書が明示的に引用するNebrijaのラテン文法書のうち、最も詳細な第3版「広本」(edicion extensa)の最初の版である1495年Salamanca版を、その詳細な注(scholia)を含めて、完全に電子テキスト化した。又、同じく日本イエズス会文法書が依拠したAlvaresのラテン文法書のうち、大文典改訂版(1575)、小文典スペイン語版(1578)、小文典ポルトガル語版(1583)の電子テキスト化も終え、その殆どをデータベースとして公開した。又、これらの電子テキストを用いて、日本イエズス会文法書がこれらの先行ラテン文典に依拠した部分と、そこから逸脱した部分に就て、査読付き学会誌の論文として公刊し、関連の国際学会にて査読付き発表を行なった。 3)キリシタン文献データベースの修正 -- 異綴り・異形態の包摂修正 : 過年度の研究による対訳辞書データベースに就て、異綴り・異形態の包摂表・包摂ソフトウェア(トランスレータ)を、ポルトガル語専門家の精査を経て、根本的に書き直した。 4)コンカニ語関連原典の確認 : 「宣教に伴う言語学」の対照資料として、コンカニ語(インド)・ポルトガル語対訳の教義書の詳細な注釈を公刊した。(来年度まで継続連載)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1)専門家が未調査であった「コンテンツスムンヂ」(1596)のHerzog August Bibliothek(ドイツ Wolfenbuttel)本を、初めて原本調査し、既存2本の再調査と併せて、詳細な本文記録を完成し、公刊の準備を調え得た。(来年度に論文として出版予定)。これは、課題申請時には知られていなかった文献で、予期を上回る成果である。 2)Nebrijaラテン文法第3版「広本」(1495)、Alvaresラテン文法改訂初版(1575)、同小文典スペイン語版(1578)・ポルトガル語版(1583)と、日本イエズス会文法書が依拠した主要文典の全ての電子化を終え、その大部分をデータベースとして公開した。更に、それらの電子化テキストに基づく査読論文を公刊し、且つ国際会議で発表して、国際的な評価を得た。当初は、論文化は来年度以降を想定していたので、予定よりも遥かに早く成果公開に結実させられた。 3)従来から公開しているキリシタン文献データベースの異綴り・異形態の包摂ソフトウェア(トランスレータ)を根本的に修正した。これは、ポルトガルの専門家との緊密な連携に拠るものであり、当初の予定よりも早い進捗である。 4)コンカニ語関連原典の確認 : 「宣教に伴う言語学」の対照資料として、コンカニ語(インド)・ポルトガル語対訳の教義書の詳細な注釈の公刊を開始した。これは、予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
1)「コンテンツスムンヂ」の書誌調査結果をなるべく早く公刊し、併せて翻訳底本候補の西訳本の電子化データ作成を進める事で、翻訳実態に関する研究の進展を目指す。 2)イベリア半島の辞書・文法書類の電子化は、その解釈の明示の一方法として、英訳・和訳の公刊を検討する。電子化データの作成と、そのデータベース公開により、全文が自由に検索可能になった事の意義は大きく、既にこの電子化データに基づき査読付き論文・国際学会発表も行なったが、やはりラテン語原文のみでは、解釈の明示・それに基づくキリシタン文献への影響の論拠の呈示には不足である。英語は、語順や格関係がラテン語と余り遠くないため、英訳を主とし、更に和訳を添える事を検討する。 3)ローマ字本キリシタン版の漢字表記推定は、国字本(漢字仮名交じり文)キリシタン版の漢字表記が「定訓」に基づくことが代表者らの研究で判明しており、国字本だけでなくローマ字本に対しても国字本の「定訓」と一貫した漢字表記を与えることが可能であろうと推測しているので、ローマ字本・国字本総合データベース(過年度までに作成済)に基づく対照作業を進め、「定訓」の一貫性の検証を兼ねて、漢字表記の妥当性の検証を進める。 4)コンカニ語関連原典の確認の継続:コンカニ語(インド)・ポルトガル語対訳の教義書の詳細な注釈の公刊を連載中であり、これを着実に継続する。
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