研究課題/領域番号 |
17H02341
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
豊島 正之 上智大学, 文学部, 教授 (10180192)
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研究分担者 |
丸山 徹 南山大学, 人文学部, 教授 (40165949)
白井 純 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (20312324)
岸本 恵実 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (50324877)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | キリシタン文献 / 宣教に伴う言語学 / Missionary Linguistics / キリシタン版 / 日ポ辞書 / vernacular grammar / ラテン文典 / 印刷史 |
研究実績の概要 |
16~17世紀のキリスト教宣教時の日本語研究は、「キリシタン語学」として、先学の多くの研究成果があるが、宣教に伴うアジア・中南米語の研究は、これらの言語とラテン文法との初の言語学的邂逅として、新分野「宣教に伴う言語学」missionary linguisticsを形成しつつある。 本研究は、キリシタン語学が依拠していた当時の欧州側典拠文献を探索し、「宣教に伴う言語学」の手法によって、原典とキリシタン文献とを克明に対照する作業を通じて、当時のキリシタン達の持ち得た視点からキリシタン語学の構築を再現し、印刷史・表記史の観点も加味して、キリシタン語学を根源から体系的に再編成する事で、今後の日本語史研究の確かな基盤の一つとして位置付ける事を目指すものである。 今年度は、昨年度に引き続き、キリシタン文典(文法書)の典拠探索と、その電子的リソース構築を進め、過年度に構築済のキリシタン文献関連文法書データベース https://joao-roiz.jp/LGRI/ に新たに4件を追加して広く無償で公開している他、学会発表・査読論文の公刊などの活発な活動を行なった。又、研究分担者の白井純が、2018年8月に南米ブラジル・リオデジャネイロに、キリシタン版「日ポ辞書」(1603年刊)の存在を初めて報告した事は、この稀覯書が世界に5冊しか現存しない事を考慮すれば、研究開始時には全く想定しなかった悦ばしい驚きであり、この分野の文献学的研究の今後の進展に大いに期待を持たせる結果となった事は、特筆すべきである。既に、この辞書に関する研究論文を公刊しており、来年度の出版・研究に向けて、研究会・出版交渉などを進めている処である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
キリシタン文典(文法書)の典拠探索が想定以上に進捗し、又、その電子的リソース構築も予定以上に順調であって、最終年度に公開予定としていたキリシタン文献関連文法書データベースは、既に https://joao-roiz.jp/LGRI/ に公開するに至った。(現在も尚拡張中で、最終年度には更に拡大され、他デーベースと統合検索も行なう形での公開を予定)。又、学会発表・査読論文の公刊などの研究成果公表も、予定以上に活発であり、査読論文も全て採択されるなど、研究活動は計画以上に順調に進捗している。 更に、研究分担者の白井純が、2018年8月に南米ブラジル・リオデジャネイロに、キリシタン版「日ポ辞書」(1603年刊)の存在を初めて報告した事は、この稀覯書が世界に5冊しか現存しない事を考慮すれば、研究開始時には全く想定しなかった成果であり、既に研究分担者が数度の渡伯を行なって原本観察を進めているほか、研究代表者も来年度(2019年度)の渡伯を予定して、本書の文献学的研究の今後の進展に大いに期待が抱ける状況である。本書の所在報告から半年に過ぎないが、既に、研究論文も公刊しており、来年度の出版・研究に向けて、研究会・出版交渉などを積極的に行なって、今後の研究進展を期している。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は最終年度である。本研究は、キリシタン文献の内、特に文法書に焦点を当てて、その典拠探索を行ない、国際学会発表・査読論文の公刊などを積極的に行なって来たが、その進捗は想定以上であるので、来年度中に何らかの形での国際研究集会を(日本で)開催するなどして、その成果の共有を目指す。又、その電子的リソース構築も予定以上に順調であるので、更に拡張中を続け、他デーベースとの統合検索も、より洗練された形で行なう事を予定している。 更に、研究分担者の白井純が、2018年8月に南米ブラジル・リオデジャネイロに存在を報告したキリシタン版「日ポ辞書」(1603年刊)については、既に国際的な共同研究による研究論文の公刊と、詳細な解説付きの複製本の出版の計画が進行中であるので、来年度の早い時期に再度の渡伯を行なって、原本の観察の洗練と、研究の深化を進めたのち、来年度中の出版をめざす。これに伴う国際集会もブラジル、又は日本での開催をめざし、本研究分野に対する国際的な認知を獲得すべく努力する。 これらの国際研究集会の成果を、来年度以降の適切な時期に出版するため、更に国際的な共同研究態勢を拡充して、文法書史だけでなく、辞書史・語彙史の海外の専門家の協力も得て、出版準備を進めたい。
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