研究課題
本年度は最終年度であるため、理論的統一化および実験のさらなる精緻化および拡充を図った。理論面においては、2020年度は引き続き人間言語における入れ子依存関係と交差依存関係の本質について研究を集中的に行なうと共に、統辞計算の本質に関し「素性の平衡分布」という概念を基にして一般理論を構築した。また、人間言語における交差依存の例として挙げられてきた様々な現象の本質について考察した結果、(いくつかの未解決の部分はあるが)人間言語の中核的部分の構造は基本的に併合演算によって生成・規定される特性に限ることが出来るという見通しがついた。前年度の研究において析出された3種類の左右関係に関する研究も継続した。これらの左右関係の脳科学的研究については、将来の研究の課題としたい。実験面では、これまで5年間にわたる研究成果として、神経膠腫、機能結合、心的状態、記憶想起、第2言語獲得、マルチリンガルに関する原著論文をそれぞれ出版し、さらに総説などを執筆した。特にマルチリンガルの研究では、日本語を母語とする参加者に対してカザフ語を新たに習得させ、MRI装置と文法課題を用いて言語獲得のプロセスを調べて、英語とスペイン語を習得した日本語母語話者(多言語群)は、英語を習得した日本人(2言語群)と比較して、新たな言語の習得時の脳活動が活発になることを発見した。特に、左脳の言語領野の活動が、多言語群で2言語群よりも定量的に高くなることを見出した。3言語以上の習得経験を持つ多言語群の方が、2言語群より新たな言語の獲得に有利であることが、脳活動から初めて実証されたことになる。これらの結果は、複数の言語の習得効果が累積することで、より深い獲得を可能にするという仮説「言語獲得の累積増進モデル」を支持する。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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