• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実績報告書

CEFRを日本語に適用するための尺度構成理論を中心とした基礎研究

研究課題

研究課題/領域番号 17H02351
研究機関名古屋大学

研究代表者

野口 裕之  名古屋大学, 教育発達科学研究科, 名誉教授 (60114815)

研究分担者 島田 めぐみ  日本大学, 大学院総合社会情報研究科, 教授 (50302906)
熊谷 龍一  東北大学, 教育学研究科, 准教授 (60422622)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードCEFR / 非欧州言語へのCEFR適用可能性 / 能力記述文の順序性 / 日本語の独自性 / 日本語能力記述文の尺度構成 / 項目応答理論 / Rasch モデル / CEFR能力記述文の特異項目機能(DIF)分析
研究実績の概要

2017年度は申請書の「研究実施計画」にある「海外訪問調査」を海外テスト開発機関および外国語教育機関で実施した。具体的には、ⅰ) 欧州圏の機関(英国、フランス、ベルギー)、ⅱ) 日本語も含む複数の外国語を包括するナショナル・カリキュラムを持つ国の機関(オーストラリア)、ⅲ) 非欧州圏で既に「CEFR準拠」の言語テストを開発・実施している機関(中国)、を訪問した。
その結果、ⅰ)[英国] CEFRの導入は大学によって温度差がある、欧州言語はCEFRのCan-do statementsをそのまま使用しているが日本語では一部変更して利用している(例えば、過去形の扱いで欧州言語ではA2だが、日本語ではA1とするなど)、[フランス] 中等教育ではCEFRの5技能に漢字リストを加えて6技能としている、日本語のカリキュラムとCEFRの能力記述文の順序が逆転しているところもある、[ベルギー] 能力記述文は場面や状況に応じて同じものを異なるレベルで使用することがある、漢字語彙をCEFRのグリッドに入れるかどうかは難しく文脈化を考える必要がある、ⅱ)[オーストラリア] CEFRで外国語科目のレベルを表示することが全ての外国語に対して義務付けられることはなく、欧州系の言語では実施されているが、日本語では難しく実施されていない、ⅲ)[中国] CEFRは言語共通参照枠組であるから、中国語に取り入れる場合にはまず共通性から考え、独自性はその後で考える、HSK2009ではASSET LanguagesやACTFLも参考にした、などの情報が得られた。また、英国のケンブリッジ英語検定機構の Dr.Savilleからは、CEFR自体は色々な言語に適用することができる、すなわち、共通部分が大きいが、言語間で違いもある。それはCEFRが言語の独自性を明らかにするという意義もある、という示唆を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2017年度は、1)海外訪問調査に関しては、当初の予定と一部訪問機関を変更した。それは、第1外国語に日本語が含まれている中等教育学校、CEFRの開発に大きな貢献をし、現在も世界の言語テスト研究開発機関のリーダー的な機関を訪問先に加えたことによる。実際に訪問した機関は、ⅰ)CEFRが想定している欧州圏の機関として、Lycee de la Fontaine、K-U Leuven、Oxford Brooks University、SOAS、国際交流基金ロンドン文化センターを、ⅱ)日本語も含む複数の外国語を包括するナショナル・カリキュラムを持つ国の機関として、メルボルン大学、NSW大学、モナシュ大学を、ⅲ)非欧州圏で既に「CEFR準拠」の言語テストを開発・実施している機関として、Chinese Testing Internationalを訪問して、情報収集することができた。また、CEFRの開発に大きく貢献し、現在も英語能力検定試験を開発し、尺度化や妥当性検証の理論的・実際的な研究開発を続けているケンブリッジ英語検定機構でDr.Saville氏とCEFRに関する議論ができたことは、日本語教育に目標言語を限らない視点で得られた情報として貴重なものであった。以上のように、当初計画と訪問調査機関が変更になっていることと、2018年度に補足的な訪問調査を実施することが必要になったが、研究目的に照らして特に問題はないと評価できる。
2)また、日本語学習者に対する、能力記述文難易度の順序性判断課題によるパイロット実験の結果、能力記述文の難易度の順序性について一部逆転が見られたことを学会で研究協力者の大隅敦子が発表した。なお、実験自体は本研究課題が採択される以前に実施されていたが、今後この実験をさらに展開するための示唆が得られた。
1)2)合わせて、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

2017年度の海外訪問調査の結果を受けて、2018年度は以下の研究を実施する。1)英国でかつて実施されたAsset Languages(Japanese)の関係者に対して、他の欧州系の言語と比較して日本語能力を同じ枠組でレベル比較するにあたって留意した点について聴き取り調査を行なう。これは、CEFR日本語版に必要なレベル調整や独自の能力記述文に関係する基本調査のひとつになる。2)既存のCEFR尺度の日本語に対する有効性を調査する。昨年度の海外訪問調査の結果を受けて、日本語の独自性が影響する可能性のある言語能力記述文と言語間で共通な言語能力記述文を、調査協力者の負担に配慮してCEFR全体から精選して「自己評価調査票」を作成する。これを500名程度の日本語学習者(漢字圏母語・非漢字圏母語)に実施して、能力記述文の難易度順序性の逆転や学習者の母語間でのDIF分析などの統計分析により検討する。日本国内の日本語学習者に加えて、海外(ドイツまたは米国を予定)の日本語学習者に対して調査を実施する。この調査はパイロット・スタディと位置付けられ、結果は国内の学会等で発表する。3)日本語の独自性を反映する能力記述文を開発する。2)の結果を踏まえ、さらに、漢字使用度指標や学習者コーパス情報なども利用して、「文字(漢字)情報処理能力」や「待遇表現」その他日本語の独自性を反映する能力記述文の内容および記述について検討する。これはCEFRで欧州系の言語と共通の枠組みでは捉えきれない日本語の独自性を明らかにするための基礎資料となる。そして、既存の能力記述文も含めた学習者調査票、および、大規模調査実施計画の検討に入る。すなわち、CEFR日本語版および補助尺度の原型(プロトタイプ)の開発に着手する。
また、日本語における言語能力記述文の難易度順序性に関する実験は2018年度も継続して実施する。

備考

講演 :熊谷龍一(2017/6/14)(6/20)IRT analysis of test data using EasyEstimation,メルボルン大学.
野口裕之(07/18)これだけは知っておきたい「CEFR」入門,ハピラル・テストソリューションズ.(11/29)民間英語資格・検定試験導入の問題点ーCEFRレベルによる対照表を合否判定に使えるのか?,地域科学研究会・高等教育情報センター.

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 学力の評価と測定をめぐってー学力の評価と測定とその周辺の話題2018

    • 著者名/発表者名
      野口裕之
    • 雑誌名

      教育心理学年報

      巻: 57 ページ: -

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] IRTとCBTの光と影ー高大接続改革の夢か現か幻か2018

    • 著者名/発表者名
      野口裕之
    • 雑誌名

      名古屋大学大学院教育発達科学研究科附属高大接続センター紀要

      巻: 2 ページ: 29-47

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 高度外国人材に求められるビジネス日本語フレームワークの構築―直観的手法を中心に―2017

    • 著者名/発表者名
      葦原恭子・奥山貴之・塩谷由美子・島田めぐみ
    • 雑誌名

      琉球大学国際教育センター紀要

      巻: 1 ページ: 1-14

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Can-do statementsはいかにテスト・評価に活用できるか2018

    • 著者名/発表者名
      島田めぐみ
    • 学会等名
      第一回中国大学教育機関における日本語教育と日本語テスト国際シンポジウム
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 「CEFR(欧州言語共通参照枠)尺度」を日本語に適用する場合の 能力記述文の順序性に関する研究2018

    • 著者名/発表者名
      大隅敦子
    • 学会等名
      第2言語習得研究会(関東)
  • [学会発表] IRT系モデルとReadabilityによる日本語作文の定量的分析ー大学教員による評価とコンピュータによる自動評価の比較2017

    • 著者名/発表者名
      伊集院郁子・李在鎬・野口裕之・小森和子・奥切惠
    • 学会等名
      2017年度日本語教育学会秋季大会
  • [学会発表] リーディングスキルテスト(RST)-その教育測定的性質と教育実践に対する示唆2017

    • 著者名/発表者名
      登藤直弥・新井紀子・菅原真吾・尾崎幸謙・犬塚美輪・新井庭子・分寺杏介・野口裕之(指定討論)
    • 学会等名
      日本教育心理学会第59回総会
  • [図書] 日本語教育のためのはじめての統計分析2017

    • 著者名/発表者名
      島田めぐみ・野口裕之
    • 総ページ数
      154
    • 出版者
      ひつじ書房
    • ISBN
      978-4-89476-862-8

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi