研究課題/領域番号 |
17H02361
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
畑佐 由紀子 広島大学, 教育学研究科, 教授 (40457271)
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研究分担者 |
高橋 恵利子 目白大学, 外国語学部, 准教授 (30710868)
ホドシチェク ボル 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 講師 (10748768)
山元 啓史 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 准教授 (30241756)
前川 眞一 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (70190288)
渡部 倫子 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (30379870)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 音声教育 / 音声評価 / e-ラーニング / 日本語教育 |
研究実績の概要 |
2017年度は(1)mdprefを統計手法として音声評価に応用する可能性の検証、(2)英語と中国語を母語とする学習者の日本語音声の問題に関する先行文献の考察、(3)英語と中国語を母語とする日本語学習者の日本語の発音習得に影響する認知的要因の探索的研究、(4)言語評価理論に関する先行文献の考察、そして(5)音声指導の日本語のカリキュラムへの組み込み方について考察した。(1)については、mdprefでは発音要因の影響度の傾向を示すことが困難であることがわかり、mdprefに依存しないクラウドソーシングによる評価システムを構築することにした。(2)については、先行研究で指摘されている学習者の問題は、音声の対照研究に基づくものが多く、必ずしも現場の教師の意見とは一致しないことが分かった。(3)については、英語母語話者と中国語母語話者では、知覚能力の発音に対する影響度が異なるが、知識やモニター力については母語にかかわらず重要であることが分かった。また、英語母語話者の知覚能力の低さが発音習得を妨げる可能性も示唆された。(4)に関して、第二言語としての日本語の評価理論は欧米の80年代の理論を踏襲しており、その後の理論的進展があまり見られないこと、特に、国内の発音評価に関する考え方はいわゆる母語話者を到達目標とする考え方が主流であるのに対し、欧米ではintelligibility, comprehensibility, foreign-accentedness, fluency を指標とする考え方に移行していることがわかった。(5)については、日本語の発音指導にはテクノロジー的には優れたものがみられ、様々なツールを用いて音声の自律学習をさせている機関があることもわかったが、初級者と対象としたものが少ないこと、リピートが多く指導法にバラエティが少ないことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度の基礎調査をもとに、以下のような評価システムの構成および練習モジュールの構成を決定した。評価システムは、生成テストと知覚テストから成る。生成テストでは、学習者の発話をintelligibility, comprehensibility, foreign-accentednessの指標を用い、クラウドソーシングによる判断を可能とする。知覚テストは、リズム、アクセント、音素、拍感覚のテストを含み、自動評価システムとする。指導モジュールも生成練習と知覚練習からなり、リズム、アクセント、音素、拍感覚の指導を評価システムの診断結果をもとに、学習者に提案する。練習モジュールは、繰り返しだけではなく、積極的にモニター力を養う、ゲーム性の高いものを取り入れ、モチベーションの維持を目指す。生成においてはダイナミック・アセスメントで用いられるフィードバックの提示法を用いる。語彙と文法は複数の初級の教科書に共通して出現するものを優先し、初級後半の学習者から、授業に取り込めるようにする。さらに対象とする音声特徴は学習者の音声的逸脱すべてを対象とするのではなく、母語話者や理解を妨げるか、母語話者による評価を下げやすいものに限定する。現在は、評価システムの刺激語と刺激文がテストとして機能するか事前調査をしている。また、オンラインは芯をするため、アプリを作成するプログラマーを米国で探し、内諾を得た。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度を通して、評価システムをオンラインで構築し、国内と米国で中国人とアメリカ人を対象に試行し、精度が上がった時点でアプリ化し、試行する。また、2018年6月以降は、特殊拍を中心とした知覚練習モジュールの作成の一部に取り掛かり、2018年度後半に事前調査を始める。
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