研究課題/領域番号 |
17H02367
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研究機関 | 東海学園大学 |
研究代表者 |
青谷 法子 東海学園大学, 教育学部, 教授 (00278409)
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研究分担者 |
Fraser Simon 広島大学, 外国語教育研究センター, 教授 (10403510)
杉野 直樹 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (30235890)
荘島 宏二郎 独立行政法人大学入試センター, 研究開発部, 准教授 (50360706)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 教育評価・測定 / 心的語彙ネットワーク / ポートフォリオ開発 |
研究実績の概要 |
1)ESPの観点から、異分野で使用される表現の差異を描出することを目的として、データマイニングの一手法であるアソシエーション分析を援用し、さらに抽出されたアソシエーションルールをネットワーク図として視覚化した。情報科学分野の論文と医学分野の症例報告からそれぞれ約10万語を収集し、Rパッケージaprioriを用いて一文中に共起する語の組み合わせをアソシエーションルールとして抽出した。その結果、前者では4,726文から61個の共起パターンが、後者では4,848文から105個の共起パターンが抽出された。次に、ネットワーク視覚化ツールGephiを用いて共起パターン相互の関連性を把握した。分析結果は、分野間の違いに加えて論文と症例報告というジャンル間の差異を明確に示しており、アソシエーション分析とネットワーク分析の組み合わせによる特徴描出が有効な手段であることが示された。また、共起パターンの視覚化がESPライティングに果たす役割も示唆された。 2)語彙知識発達の促進要因の解明を目指し、リーディング前後の語彙ネットワーク構造の変化の可視化を試みた。同じリーディング課題に対し異なったタスクを与えた2群の日本人学習者が、実験の前後で語彙間の関係をどのように捉えるのかについて、リーディング教材に出現する8つのキーワードを用い、それぞれの間の関係の強さを視覚的アナログスケールで評価させ、その結果を「非対称フォン・ミーゼス尺度法」AMICESCALを用いて分析し、導き出された語彙ネットワーク構造をプロット図として可視化した。その結果、リーディング後にTOEICスタイルの問題を解かせた群よりも、日本語の部分訳をさせた群において、語彙間の距離をより近く認識するようになる傾向がみられた。本研究により、語彙ネットワーク構造の変化を促すためには、精読による深い意味処理が有効であるという実証的データを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度計画で打ち立てた3つの課題のうち、「(1)継続的事例研究による語彙知識の発達過程の記述研究」における「(1a)多読活動を通した全般的語彙ネットワークの拡張・深化過程の解明」に関しては、日本人大学生を対象としたデータの蓄積は進んでいるが、研究成果の公表には至っていない。「(1b)ESPの観点からの分野固有語彙ネットワークの拡張・深化過程の可視化」に関しては、研究実績1)にあるように、成果は順調に積み重ねられている。「(2)語彙知識発達の促進要因の特定と機序の解明」については、研究実績2)にあるように、一定の成果は積み重ねられているが、大きな前進には至っていない。「(3)学習者の語彙ネットワークを記録する語彙学習ポートフォリオの開発」については、これまでに開発を続けてきた英語語彙ネットワーク構造可視化プログラムLAS(Language Analysis System)を用いたプロトタイプの開発の準備段階に入っている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度開発を行った英語語彙ネットワーク構造可視化プログラムLAS(Language Analysis System)によって、英文中に出現する語彙の共起関係をアソシエーション分析によって抽出するまでのプロセスを自動化することが可能となった。今年度はさらに開発を進め、共起関係に基づく語彙ネットワーク・プロットの出力を自動化することを目指す。このシステムが以下に挙げる3つのコンポーネントの研究進展に資すると考えている。(1)継続的事例研究による語彙知識の発達過程の記述:長期的に収集した学習者のデータを基に、学習者特性として設定した学習方略、目標言語との接触量、学習時間、語彙サイズなどを変数とし、定期的に記録されている可視化された語彙ネットワーク構造の分析を行う。最終的には、多読活動を通して、学習者の語彙ネットワークがどのように拡張し、深化していくかの過程を可視化モデルとして構築する。また、ESPの観点から、これまでに蓄積されたデータについてコーパスデータとの詳細な比較分析を行う。最終的には学習者の専門分野についての語彙ネットワークがどのように拡張し、深化していくかの過程を可視化モデルとして構築する。(2)語彙知識発達の促進要因の特定と機序の解明:語と語の関係がどのようにネットワーク化されているかについての要因の解明を行う。そのメカニズムを解明するために、引き続き、語彙関係の非対称性に注目しながら実験・分析を行い、可視化モデルとして構築する。(3)学習者の語彙ネットワークを記録する語彙学習ポートフォリオの開発:LASによって自動化されたプログラムを語彙学習ポートフォリオの構築に生かす手法について研究を行う。引き続き、古賀友也氏に研究協力者として参加していただくとともに、LMS 開発実績をもつ専門家からの技術提供を受ける。
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