研究課題/領域番号 |
17H02383
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中村 尚史 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (60262086)
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研究分担者 |
橘川 武郎 東京理科大学, イノベーション研究科 技術経営専攻(MOT), 教授 (20161507)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 危機対応 / 総合地域史 / 総合地域調査 / 岩手県釜石市 / オーラル・ヒストリー / 津波被災 / 地域社会 / 東日本大震災 |
研究実績の概要 |
本研究は、近現代日本の地域社会における「危機対応」の位相が、どのような変遷をたどったのかという問題を、岩手県釜石市を中心的なフィールドとし、政治史、経済史、社会史といった歴史学の様々な領域において学際的に検討することを目指している。具体的には、文書史料調査とオーラル・ヒストリーという歴史学の方法を軸としながらも、参与観察など他の社会科学分野の調査方法も取り入れつつ、危機に対する地域社会の対応を多元的に考察している。 本研究における調査活動の中心は、釜石市における総合地域調査に置かれており、本年度は2回の大規模現地調査を実施した。2017年8月22日から26日にかけて行った第1回現地調査は、インタヴュー対象者の絞り込みや、史料の所在調査といった予備的調査であり、30名の研究者・スタッフが参加した。第2回現地調査は2018年2月12日から2月26日にかけて15名の研究者が参加し、オーラル・ヒストリー、企業調査、個別聞き取り調査、映像記録、現地視察といった多様な調査を展開した。 また4月、6月、10月、1月には東京で準備研究会(釜石調査研究会)を開催し、現地調査にむけての準備や、釜石市からゲストを迎えての研究会を実施した。釜石から市役所の担当者を招いて実施した研究会は、現地調査を円滑に進める上で、大きな役割を果たした。 さらに本調査研究活動の釜石市民への広報のため、今年度は6月と2月に危機対応学トーク・イベントを行い、8月に危機対応に関連するシンポジウムを開催した。いずれも多くの市民にご参加いただけたため、本調査研究の認知度を高めることが出来たのではないかと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の初年度である今年度は、当初、2018年度に実施する本調査のための準備調査と準備研究会を行う予定であった。しかし、2017年8月に実施した第1回の現地調査では、①第一次産業班(研究協力者:高橋五月)、②第二次産業班(研究協力者:中林真幸)、③第三次産業班(研究協力者:橘川武郎、二階堂行宣)、④地方政治班(研究協力者: 宇野重規、佐々木雄一、五百旗頭薫)、⑤地域社会班(研究協力者: 梅崎修、竹村祥子、佐藤慶一)、⑥地域文化班(研究協力者: 佐藤由紀、大堀研)の各班が、準備調査を終え、一部は本格的なヒアリング調査や文書調査に取りかかった。そして2018年2月に実施した第2回現地調査では、①を除く各班が本格的な調査活動を行った。一方、やや出遅れていた地方行政班には、2018年度から新たな研究協力者として地方行政の専門家である荒木一男(東京大学社会科学研究所准教授)と竹内直人(京都橘大学教授)が加わり、陣容を一新した。現在、同班は、鋭意、準備調査を進めており、2018年8月の本調査の際には、大きな成果が期待できる。 このように初年度において、現地調査が大いに進展した理由の一つに、準備研究会の充実が挙げられる。今年度は4回実施した東京での釜石調査研究会に、計7人の釜石市役所職員の方々をお招きし、それぞれの専門分野に関するレクチャーをしていただいた。この試みは、各調査班の事前準備に資するだけでなく、釜石市との意思疎通を円滑化し、現地調査を効率化することになった。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、8月に本研究のメイン・イベントである第3回釜石現地調査を予定している。従って、4月、6月、7月の釜石調査研究会では、昨年度に引き続き釜石からゲストを招いて、準備研究会を実施したい。その上で、8月21日~26日に予定している第3回現地調査では、すべての調査班が参加して、一斉調査を実施する。 その後、10月に現地調査の成果を持ち寄ってフォローアップの研究会を行い、調査内容を互いに報告し合う。そして12月、2月と2回にわたり、研究成果刊行にむけた研究会を実施し、各自の執筆構想のすり合わせを行う。 また8月の本調査に何らかの事情で参加できなかった人、追加調査が必要な人のために、2018年1月にも第4回の現地調査を設定する可能性もある。
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