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2018 年度 実績報告書

前近代における巨大地震の家屋倒壊率と死亡者数の研究

研究課題

研究課題/領域番号 17H02385
研究機関新潟大学

研究代表者

矢田 俊文  新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (40200521)

研究分担者 西山 昭仁  東京大学, 地震研究所, 助教 (50528924)
浅倉 有子  上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (70167881)
原 直史  新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (70270931)
川岡 和美 (西尾和美)  ノートルダム清心女子大学, 文学部, 教授 (80248343)
堀 健彦  新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (80313493)
小野 映介  新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (90432228)
谷口 央  首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (90526435)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード地震被害報告書 / 半潰 / 家屋倒壊率 / 地震被害報告書雛形 / 夫食金貸与 / 三島宿 / 1707年宝永地震 / 1855年安政江戸地震
研究実績の概要

主な成果は以下の4点である。
1. 1707宝永地震被害報告書の記事のうちで町家・民家の被害の事例143例を検討すると潰・半潰・大破という順で記される例は全体の22パーセントであったこと、1854嘉永東海地震の被害について東海道三島宿は同じ被害とその被害数を道中奉行には半潰47軒、代官には大破47軒と報告していること、1855安政江戸地震の被害では武蔵国葛飾郡笹ケ崎村は代官が示した被害報告書の雛形に従って被害報告書を作成し提出していたこと、代官の雛形作成の目的は夫食米・夫食金貸与のための資料作成のためのものであったことから半潰数は家屋倒壊率を導き出すための被害数としては使用するべきではなく、家屋全壊率を家屋倒壊率とすることが妥当であるとした。
2.これまで、伊豆大島については、史料として全く確認できなかった1703元禄関東地震の際の死亡者数を明らかにした。
3.さまざまな地震資料の検討を行った。1361康安地震の一次史料と太平記を比較し、太平記の地震叙述が荒唐無稽で不正確でもある一方、現実と接点や関連をもつことを浮かび上がらせた。1854安政南海地震とその2日後の安政伊予西部地震に関する史料から地震の揺れの大きさや家屋の被害程度を示す史料記述を抽出して、史料中の表記と被害の実態との関係について検討した。1847善光寺地震、1854東海地震における地震被害のデータを分析し、地震被害情報の根幹は村から藩への報告であり藩の上層部に行くほど情報は曖昧となることを明確にした。善光寺地震に関し被災地における個人が作成した資料を庄屋等の公的・客観的な報告と比較し、相互の特質の違いを明確にした。津波被害を描いた瓦版の絵図の検討の結果、津波被害情報の更新にともない絵図の版がアップデートされたことを明らかにし、また瓦版の絵図が津波被害情報を集積する上でベースマップとして活用された可能性を指摘した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

計画どおり、地域ごとの家屋倒壊率・死亡者数、家屋倒壊率の導き出し方の研究を進めた。
死亡者数については、これまで伊豆大島については、史料として全く確認できていなかった1703年元禄関東地震の際の死亡者数を明らかにした。
家屋倒壊率の導き出し方の研究については、前近代の家屋の地震被害の史料を検討することによって、家屋倒壊率を導き出す方法の再検討を行った。まず、1707年宝永地震被害報告書(楽只堂年録)の記事のうちから町家・民家の被害の事例143例を検討すると、潰・半潰・大破という順で記される例は全体の22パーセントで、半潰という用語を使用しないで潰・大破という記載は16パーセント、潰・破損という表現は12パーセントであったことがわかった。次に1854年嘉永東海地震による東海道三島宿(静岡県三島市)の被害報告書を検討すると、同じ被害とその被害数を道中奉行には半潰47軒、代官には大破47軒と報告していることから三島宿は道中奉行・代官それぞれから命ぜられた雛形にもとづいて報告していると推定した。さらに地震被害報告書と雛形の検討を行い、1855年安政江戸地震の被害では、武蔵国葛飾郡東葛西領笹ケ崎村(東京都江戸川区)は代官が示した被害報告書の雛形に従って被害報告書を作成し提出していたことを確認した。また、このような代官の被害報告の雛形作成の目的は、夫食米・夫食金貸与のための基礎資料作成のためのものであったことを明らかにした。以上のことから半潰数は家屋倒壊率を導き出すための被害数としては使用することが出来ないことは明白であり、広域の地震被害を検討するときには、家屋倒壊率を導き出すためのものとして半潰軒数は使用しないで、潰家数だけを使用して家屋倒壊率を出さなければならないことを明らかにするなど、当初の計画どおり研究が進んでいる。

今後の研究の推進方策

6月と11月に研究打ち合せ会を新潟大学で開催する。前近代の地震における家屋倒壊率と死亡者数とその原因を導きだす基礎的研究を行い、その方法を提示する。そのために以下の調査・研究を行う。
(1)1703年元禄地震・1707年宝永地震・1855年安政江戸地震を中心に、皆潰数・半潰数・死亡者数が記された史料の原本調査を行い翻刻し、家屋倒壊率を出し、死亡者の所在地を特定する。(2)家屋倒壊率と死亡者数を確定できた地点と死亡者所在地の地形分析を行い、死亡理由がどのような地形によるものかを明らかにする。分担に従い、(1)、(2)を行う。
本年度は最終年となるので、集積した各地の地震による死亡者数が記された史料を分析し、死亡者数を確定する方法と死亡原因を数値であらわす方法について検討する。死亡原因の研究には、考古学研究者も参加する研究会を組織して検討を行う。
本研究の成果をふまえ、宇佐美(2013)等の歴史地震カタログに記された1703年元禄地震(相模トラフ)・1707年宝永地震(南海トラフ)をはじめとした地震による死亡者数を検討し直した数値を提出する。また、死亡者数を確定する方法と死亡原因を数値であらわす方法を提示する。
さらに、集積した地震による家屋倒壊率を算出する根拠となった史料、死亡者数が記された史料をまとめた『近世以前地震家屋倒壊率・死亡者数基礎史料集』を作成する。史料集には皆潰・半潰等がわかる史料も掲載する。被害報告書の雛形についても収集して収める。被害報告書の雛形は家屋倒壊率を算出する根拠となった史料の研究を深める上で重要である。特に文書の雛形の説明は文書研究の訓練をしていない理系研究者に対しては重要である。1855年安政江戸地震に関しては、地震と台風を混同して研究する研究者が発生しないように、翌年の安政3年台風の被害報告書の雛形も収集して掲載する。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 地震被害評価方法の再検討2019

    • 著者名/発表者名
      矢田俊文
    • 雑誌名

      資料学研究

      巻: 16 ページ: 1-15

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 支配階層別にみた地震情報の収集について2019

    • 著者名/発表者名
      原田和彦
    • 雑誌名

      災害・復興と資料

      巻: 11 ページ: 1-14

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 一八五四年安政東海地震(嘉永の東海地震)と信濃の被害2019

    • 著者名/発表者名
      原田和彦
    • 雑誌名

      災害・復興と資料

      巻: 11 ページ: 21-32

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 個人による震災被害記録と客観性―善光寺地震の新出史料をめぐって―2019

    • 著者名/発表者名
      原直史
    • 雑誌名

      資料学研究

      巻: 16 ページ: 1-22

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 1854年南海地震による大坂市中の津波被害を描いた瓦版絵図について2019

    • 著者名/発表者名
      堀健彦
    • 雑誌名

      災害・復興と資料

      巻: 11 ページ: 1-8

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Use of high-resolution seismic reflection data for paleogeographical reconstruction of shallow Lake Yamanaka (Fuji Five Lakes, Japan)2019

    • 著者名/発表者名
      Laura Lamair, Aur_lia Hubert-Ferrari, Shinya Yamamoto, Osamu Fujiwara,他4人, the QuakeRecNankai Team (Eisuke Ono,ほか10人)
    • 雑誌名

      Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology

      巻: 514 ページ: 233-250

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.palaeo.2018.09.028

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 青森県野口貝塚周辺における完新世初頭から中期の地形環境2018

    • 著者名/発表者名
      髙橋未央,小野映介,小岩直人
    • 雑誌名

      季刊地理学

      巻: 70 ページ: 117-126

    • DOI

      https://doi.org/10.5190/tga.70.3_117

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 沖積低地の氾濫原を対象とした地形分類図作成に関する課題2018

    • 著者名/発表者名
      小野映介
    • 雑誌名

      地理

      巻: 63 ページ: 68-75

  • [学会発表] 完新世後期の青森平野南部において生じた急激な地形環境変化2019

    • 著者名/発表者名
      小野映介,小岩直人
    • 学会等名
      2019年日本地理学会春季学術大会
  • [学会発表] 康安元年地震とその史料2018

    • 著者名/発表者名
      西尾和美
    • 学会等名
      第6回前近代歴史地震史料研究会
  • [学会発表] 伊豆大島の災害と死者数の関係2018

    • 著者名/発表者名
      谷口央
    • 学会等名
      第6回前近代歴史地震史料研究会
  • [学会発表] 弘化4年(1847)善光寺地震の新出資料をめぐって2018

    • 著者名/発表者名
      原直史
    • 学会等名
      第6回前近代歴史地震史料研究会
  • [学会発表] 前近代における災害史研究の方法―地震・台風―2018

    • 著者名/発表者名
      矢田俊文
    • 学会等名
      第68回新潟史学会研究大会
    • 招待講演
  • [図書] 近世の巨大地震2018

    • 著者名/発表者名
      矢田俊文
    • 総ページ数
      248
    • 出版者
      吉川弘文館
    • ISBN
      9784642058636

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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