古代食の総合的復元による食生活と疾病の関係解明

2019 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 17H02393
• 研究機関: 東京医療保健大学
• 研究代表者: 三舟 隆之 東京医療保健大学, 医療保健学部, 教授 (20418586)
• 研究分担者: 西念 幸江 東京医療保健大学, 医療保健学部, 准教授 (90410208) ; 五百蔵 良 東京医療保健大学, 医療保健学部, 教授 (70299907) ; 大道 公秀 東京医療保健大学, 医療保健学部, 准教授 (50632444) ; 馬場 基 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 室長 (70332195) ; 小田 裕樹 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (70416410) ; 山崎 健 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 室長 (50510814) ; 鈴木 礼子 日本女子大学, 家政学部, 准教授 (20616239) ; 峰村 貴央 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 助教 (30769451) ; 齋藤 さな恵 東京医療保健大学, 医療保健学部, 講師 (00389040)
• 研究期間 (年度): 2017-04-01 – 2020-03-31
• キーワード: 古代食の再現 / 写経生 / 給食 / 生活習慣病 / 正倉院文書 / 木簡 / 延喜式 / 土器

研究実績の概要

本研究の目的は、まず「正倉院文書」や『延喜式』などの文献史料や木簡などの出土文字資料から古代の食品を探り、さらに土器や動物遺体などの考古学的遺物から古代の食品について、どのように加工・保存・調理されていたかを検証するものである。その上で次に再現された古代の食について栄養価の分析を行い、それを摂取することで古代にどのような生活習慣病に発展する可能性があるか、その関係を解明することにある。
最終年度である今年度の研究では、「正倉院文書」に見える写経生の給食を復元し、その栄養価と写経生の休暇願である「請暇解」に見える疾病の原因を、摂取した食事から解明できないかという試みを行った。その結果、写経生への給食の栄養価の分析では、炭水化物が圧倒的に多く、「請暇解」に見える写経生の疾病の症状と付き合わせると、糖尿病の症状と合致することが明らかになった。従来これらの写経生の疾病は、写経という労働や職場環境に伴う職業病とされてきたが、今回初めて食と生活習慣病の関係を明らかにすることが出来た。その成果を2020.9.13にシンポジウムで公表し、さらに成果報告書として『古代の食を再現する―みえてきた食事と生活習慣病』（吉川弘文館　2021，6）を刊行した。
古代においても現在においても、食生活が病気の原因であるという生活習慣病の関係を明らかにすることは、歴史・考古学分野のみならず、今後の医療や栄養学の分野においても、その成果が寄与するもの思われる。とくに当該分野における共同研究は今までに無く、その点でも独創的で革新的であると思われ、今後の日本古代の社会生活史の関連研究に対するばかりでなく、食品学・調理学や栄養学、そしてさらに医療史分野でも大きな貢献が出来るものと思われる。

現在までの達成度 (段落)

令和元年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

令和元年度が最終年度であるため、記入しない。

研究成果

• [雑誌論文] 実摂取食塩量の把握と栄養計算方法の確立～煮物等の調理後の食材と煮汁に含まれる食塩量の現状～ (2020)
  • 著者名/発表者名: 峰村貴央，田村友峰子，土橋昇，河野公子，渡邊智子
  • 雑誌名: 千葉県立保健医療大学紀要 巻: 11 ページ: 71
• [雑誌論文] 鈴鹿市岡太神社遺跡より出土した羽釜片に残存する化学物質に関する一考察 (2020)
  • 著者名/発表者名: 大道公秀、橘田規、市川順子、椎野博、清水文雄、西念幸江、三舟隆之
  • 雑誌名: 東京医療保健大学紀要 巻: 14 ページ: 67－76
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] 包まれた食べ物の歴史－古代日本を中心として (2020)
  • 著者名/発表者名: 小倉慈司
  • 雑誌名: vesta 巻: 117 ページ: 8-11
• [雑誌論文] 大甕を使う―文献史料に見える「甕」とその用法― (2019)
  • 著者名/発表者名: 三舟隆之
  • 雑誌名: 第22回古代官衙・集落研究会報告書『官衙・集落と大甕』 巻: 無し ページ: 135－145
• [雑誌論文] 古代における鰒の加工・保存法の復元とその成分 (2019)
  • 著者名/発表者名: 三舟隆之・及川夏菜
  • 雑誌名: 古代文化 巻: 71－3 ページ: 69－77
  • 査読あり
• [雑誌論文] 古代の堅魚製品の復元 (2019)
  • 著者名/発表者名: 三舟隆之・中村絢子
  • 雑誌名: 国立歴史民俗博物館研究報告 巻: 218 ページ: 445－459
  • 査読あり
• [雑誌論文] 宮都における大甕 (2019)
  • 著者名/発表者名: 小田裕樹
  • 雑誌名: 第22回古代官衙・集落研究会報告書『官衙・集落と大甕』 巻: 無し ページ: 11-31
• [学会発表] 古代における醸造と甕 (2020)
  • 著者名/発表者名: 三舟 隆之
  • 学会等名: 山梨県考古学協会
  • 招待講演
• [学会発表] 文献史料から見た塩とその使用量―古代食の復元から― (2019)
  • 著者名/発表者名: 三舟 隆之
  • 学会等名: シンポジウム「日本列島における製塩技術史の解明 Ⅰ―時代と空間の拡張から見えるもの―」
  • 招待講演
• [学会発表] 文字史料から見た古代の塩 (2019)
  • 著者名/発表者名: 馬場 基
  • 学会等名: シンポジウム「日本列島における製塩技術史の解明 Ⅰ―時代と空間の拡張から見えるもの―」
  • 招待講演
• [学会発表] 東大寺写経生の海藻摂取と疾病に関する研究 ～ヨウ素摂取量～ (2019)
  • 著者名/発表者名: 峰村貴央，佐々木梓，渡邊智子，鈴木礼子，齋藤さな恵，三舟隆之
  • 学会等名: 第66回日本栄養改善学会学術総会
• [学会発表] 奈良時代と現代の食生活の比較 ～エネルギー産生バランスについて～ (2019)
  • 著者名/発表者名: 鈴木 礼子, 西念 幸江, 峰村 貴央, 齋藤 さな恵, 山崎 健, 小田 裕樹, 馬場 基, 三舟 隆之
  • 学会等名: 第66回日本栄養改善学会学術総会
• [学会発表] 鈴鹿市岡太神社遺跡より出土した羽釜片の理化学分析 (2019)
  • 著者名/発表者名: 大道 公秀, 橘田 規,市川 順子，椎野 博，清水 文雄，西念 幸江, 三舟 隆之
  • 学会等名: 日本分析化学会 第79回分析化学討論会
• [学会発表] 平城宮朱雀門前広場の井戸から出土した奈良時代土器片の分光分析－古代人の栄養状態解明のための基礎研究－ (2019)
  • 著者名/発表者名: 大道 公秀，橘田 規, 椎野 博，清水 文雄, 西念 幸江, 小田 裕樹，三舟 隆之
  • 学会等名: 第29回体力・栄養・免疫学会
• [図書] 古代の食を再現する―みえてきた食事と生活習慣病 (2021)
  • 著者名/発表者名: 三舟隆之・馬場基ほか
  • 総ページ数: 316
  • 出版者: 吉川弘文館
  • ISBN: 978-4-642-04661-9
• [図書] 万葉集であるく奈良 (2019)
  • 著者名/発表者名: 上野 誠、蜂飼 耳、馬場 基
  • 総ページ数: 128
  • 出版者: 新潮社
  • ISBN: 9784106022906
• [図書] 第22回古代官衙・集落研究会報告書『官衙・集落と大甕』 (2019)
  • 著者名/発表者名: 小田裕樹・清野陽一
  • 総ページ数: 316
  • 出版者: 奈良文化財研究所
  • ISBN: 978-4-909931-17-7
• [図書] 農耕開始期の動物考古学 (2019)
  • 著者名/発表者名: 山崎健
  • 総ページ数: 315
  • 出版者: 六一書房
  • ISBN: 978-4-86445-114-7