研究課題/領域番号 |
17H02407
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
佐藤 昇 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (50548667)
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研究分担者 |
吉田 俊一郎 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (00738065)
上野 愼也 共立女子大学, 文芸学部, 准教授 (60733871)
葛西 康徳 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (80114437)
齊藤 貴弘 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (80735291)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | レトリック / 古代ギリシア / 西洋古典 / ギリシア史 / 民主政 / 法廷 / 弁論 / 修辞 |
研究実績の概要 |
本年度はまず先行研究の状況を把握して、代表者、分担者、協力者間で情報共有を図った。このために秋に東京大学で行った全体集会を始め、数度に渡り研究打ち合わせと意見交換を行った。とりわけ研究が先行して進展している代表者に関しては、法廷弁論、民会弁論における野次、喝采の修辞的利用について検討し、演説を行う場や立場などに応じて洗練された用法があることを明らかにして、国内の研究会や学会、さらに国際学会で複数回発表をした。また法廷での論証に用いられる証言についても検討し、論証以外の心理的影響などを考慮した修辞的用法があることを明らかにした。この点についてはやはり国際学会で発表をしている。代表者はこのほかに、夏期に渡欧して資料調査を行うとともに海外の研究協力者と意見交換を行い、最終年度に計画している国際学術研究集会の開催に向け、具体的な打ち合わせを開始した。分担者および協力者は、代表者との意見交換を重ね、それぞれの分担のなかで先行研究、関連文献の調査を進めた。上野はデモステネスに加え関連するプラトーンの作品も検討にくわえて、修辞のありようを多角的に検討している。上野はまた、代表者とともに夏期にギリシアを訪ね、海外の研究者との意見交換を行った。齋藤はデモステネスを中心に宗教関連の修辞ヒエラ・ホシアの関係が弁論のジャンルごとにいかに利用されたかについて検討を進めているほか、関連の研究を学会発表し、論文にまとめた。吉田はギリシアのレトリックとラテンのレトリックについて分析を進め、関連するトピックで学会発表をしている。葛西はデモステネスを中心として法制度とレトリックの関係について分析を進め、桜井はデモステネスを中心として女性、ジェンダーに関わるレトリックの分析を進めて、関連のテーマについて図書(共著)を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ、本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。 分担者については、体調不良から学会発表や論文、著書など目に見える成果にまで到達しなかったケースもあった。しかしそのケースでも、年間を通してみれば先行研究や関連史料について十分な調査・分析を進めているため、研究計画全体から見てさほど遅滞というほどではない。またその他多くの分担者・協力者に関しては、やはり研究初年度であるため先行研究の把握と関連史料の基礎的な情報整理に傾注してきた。このため具体的な成果にまで到達したケースは必ずしも多いとは言えないが、口頭発表などで一定の成果をあげていることから、初年度としてはおおむね順調な進捗状況と言えるだろう。代表者に関しては、先行してこの研究テーマを調査していたため、個々のテーマについて国内外で複数の学会発表を行い、それらについてはすでに活字化の作業も進めており、当初の予定をかなり超えるペースで担当分の研究を進めていると評価できると思われる。また、予定通り、夏期に渡欧し、史料調査を行うとともに、海外の研究協力者と打ち合わせを重ね、次年度以降の招聘や、最終年度に予定している国際学会開催に向けた協議も順調にこなしており、総じて、初年度としてはおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画2年目にあたる本年は、当初の予定通り、それぞれ担当のテーマについて個々の調査をいっそう進展させる。代表者佐藤は、野次や歓声、見物人、証言、碑文など、演説を行う環境と実践的なレトリックの関係について検討する。分担者上野は弁論に見られる歴史叙述の修辞的技法について、齋藤は宗教に関わる言説のレトリカルな特徴について、葛西は法制度と習字の関係について、桜井・平田はジェンダーに関わる問題とレトリックの関係について、吉田は修辞理論と実践的なレトリックの関係について分析を進める。研究対象は、主として全4世紀後半に作成された法廷弁論とするが、それぞれのテーマに応じて民会演説、さらに哲学書や歴史叙述などの作品も検討の俎上に載せる。それぞれ個別の研究成果については学会発表を行い、論文や著書などにより成果を発表していく。 また代表者と研究メンバーは、学会や研究会などの機会を利用して研究打ち合わせを行う。6月には海外の研究協力者の1人Scafuro教授(Brown大学)が来日するのに合わせ、研究打ち合わせを行う。また10月には、国内の研究メンバー全員による全体研究会を東京大学で開催し、情報の共有を図るとともに、それぞれの成果を口頭で報告することとする。今年度は、各テーマの相互関連性についてもより意識を高めていく。 代表者佐藤は8月に渡英してLondon大学、Oxford大学などで資料調査を行うと同時に、海外の研究協力者と研究打ち合わせおよび学術的な意見交換を行う。9月には関心を共有する国内外の研究者とともに、古代地中海世界コロキアムを共催し、これに合わせて海外から研究協力者(Crete大学Vlassopoulos教授)を招聘する。この会にはさらに代表者佐藤および協力者櫻井も参加する予定である。
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