研究課題/領域番号 |
17H02410
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
豊田 浩志 上智大学, 文学部, 名誉教授 (20112162)
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研究分担者 |
西山 要一 奈良大学, 文学部, 教授 (00090936)
坂口 明 日本大学, 文理学部, 教授 (10153876)
渡部 展也 中部大学, 人文学部, 准教授 (10365497)
堀 賀貴 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (20294655)
池口 守 久留米大学, 文学部, 准教授 (20469399)
江添 誠 慶應義塾大学, 文学部(三田), 講師(非常勤) (80610287)
鷲田 睦朗 神戸市外国語大学, 外国学研究所, 非常勤講師 (20804628)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 3Dスキャン / バルーン撮影 / 遺跡調査 / オスティア・アンティカ遺跡 / 遺物研究 / 落書き研究 |
研究実績の概要 |
本年次は、新メンバーが現地遺跡管理事務所と接触して、どの程度研究対象の遺物調査が可能か、という交渉が最大の課題だった。 これまでの現地調査は、堀グループを含め、表面調査が主体の研究であったので、調査データ提出を交換条件として、非公開の遺跡を見学調査許可を得ればよかった面があり、そのレベルである限り、現地管理事務所との交渉はきわめてスムーズであった。新メンバーはそこから一歩踏み込んで考古学分野、具体的には貨幣(江添)・土器(鷲田)といった出土資料の調査に関連するため、それらを保存管理している現地事務所とそれらの発掘調査にかかわった現地研究者がどこまで出土資料の調査に協力してくれるか、といった微妙な問題に直面せざるをえないわけである。考古学の世界では、発掘者に第一次調査・公表権が生涯付帯している場合が多く、そのため未発表出土品に関しては(出土資料の大部分は未発表が現実)、たとえ調査させてもらえても公表することができない、悪くすると、そもそも見せてもらえないのが常識といわれている。幸いにも、管理事務所の担当者経由で、現地の発掘担当研究者の紹介していただくなど、考える限りきわめて好意的に状況の説明を受けることができた。とはいえ、おそらく具体的事例に入るとかなりの壁があるのではという感触はあった。 またもう一つの新機軸で、低空からバルーンを利用して遺跡撮影も試みる予定なので(渡部)、遺跡現場が空港に近いこともあり、どこまで可能かを探る必要があった。これに関しても、現地管理事務所が強い興味を示してくれたので、条件さえ整えば前向きに検討可能な感触を確認することができた。 従来メンバーは、関連地区を含む現地調査で、3D測量(堀)や、文字情報の痕跡調査(坂口、池口、西山)、さらには洗濯場調査(豊田)に従事した。研究協力者の奧山も落書き調査に励み、多くの成果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の表面調査は、現地管理事務所の好意的な対応で、順調に予定を消化することができている。オスティア遺跡の3Dレーザー調査も最終段階に入っており、遺跡模型も試作段階になっている。文字情報の調査も、専門の協力者の協力を得て、飛躍的に史料収集と解読が進んできているので、近い将来それなりの成果を公表できる見通しが立っている。 本年度からの新らたな調査分野(貨幣、土器)に関しては、現地遺跡管理事務所から発掘・整理担当者と連絡もとっていただき、次年度以降の作業内容へのおおまかな見通しをえることができた。 また、バルーンによる低空からの調査についても、現地管理事務所が行おうとしていた調査と偶然合致していたのこともあり、次年度に現実に実施する方向性が見えてきた。ただ、現地国での種々の法規制があるため、円滑な調査のためには、機器の使用に関しては現地の業者への委託が当面もっとも妥当であることも、徐々に明らかになってきており、科研費の柔軟な運用が期待されるところである。
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今後の研究の推進方策 |
従来の表面調査は、今後も継続的に実施することが可能と思われるので、こちらは手堅く調査を続行する。特に文字史料の集集・解読は予想以上のテンポで進展できそうである。 新規メンバーの考古学的関連の調査については、人脈を辿りながら慎重に進める必要がある。これには人的関係の構築が必須なので、かなり時間をかける覚悟が必要であろう。 低空にバルーンを飛ばす件では、管理事務所にも大きな期待をもっていただけたが、現地イタリアで数々の法的規制があり(操作者は所定の講習を受けて資格を取得していなければならない、飛ばす機器等も規制をクリアしておく必要ある、等々)、要するに、機器を含め現地業者に委託する手段をとるのがもっとも実現可能である、との認識を得たので、さしあたりはその方向で実施可能かどうかを追求してみる。 また、オスティア・アンティカ遺跡の特徴を追求する面からは、他のローマ遺跡との比較検討が必要で、その意味で、ポンペイやエルコラーノ、その他の現地調査も並行して今後も行う必要がある。
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