研究実績の概要 |
農耕の開始から都市的な巨大集落の出現までの歴史プロセスは、現代にまで引き続く人類史上の大きな転換点と言えます。研究代表者は科研費などを得て、30年以上にわたり西アジアのハートランドというべきシリア、イラン、イラクにおいて、遺跡の発掘調査を通じてこの歴史プロセスを研究してきました。その結果、従来の定説とは異なる様々な仮説を提示しています。本研究では、研究代表者が直接調査や研究に携わってきた、シリアのテル・エル・ケルク遺跡、イランのタペ・サンギ・チャハマック遺跡、イラクのカラート・サイド・アハマダン遺跡などの調査成果及び出土遺物の整理研究をさらに進めてこれらの遺跡の報告書を出版し、肥沃な三日月地帯東西での農耕化と都市化についての新仮説の根拠となる資料を具体的に提示することを目的としました。 テル・エル・ケルク遺跡:同遺跡発掘の最終報告書Vol.1.として、英国オックスフォードのArchaeopress社から、The Neolithic Lithic Industry at Tell Ain El-Kerkh (Arimura,M.)A4判370ページを出版し、現在同Vol.2 Neolithic Cemeteryの出版を準備するなど、順調に出版計画が進んでいます。 タペ・サンギ・チャハマック遺跡:1970年代に発掘された遺構・遺物の図面や写真の整理・研究、土器や黒曜石製石器、人骨や動物骨に対する自然科学的研究(SEMによる焼成温度推定やpXRFによる産地同定)も終了し、遺跡概要を出版しました。現在、最終報告書出版の最終段階にあります。 カラート・サイド・アハマダン遺跡:既に出版した大部な概要報告に加えて、肥沃な三日月地帯の東部であるザグロス地域の新石器化の様相をさらに解明するために、同地域で最も著名なジャルモ遺跡の調査研究を実施し、新石器化への新たな仮説を提示しました。
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