研究課題/領域番号 |
17H02414
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
梶原 義実 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (80335182)
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研究分担者 |
三舟 隆之 東京医療保健大学, 医療保健学部, 教授 (20418586)
尾野 善裕 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 室長 (40280531)
古尾谷 知浩 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (70280609)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 歴史考古学 / 古代史 / 古代寺院 / 窯業生産 / 集落遺跡 |
研究実績の概要 |
本年度は、以下の研究・事業をおこなった。 ・伊保廃寺の発掘調査:豊田市教育委員会および協力者の森泰通の協力をうけ、2018年8月20日から9月17日にかけて、豊田市伊保廃寺(伊保古瓦出土地)の発掘調査をおこなった。昨年度の測量調査の結果に基づき、基壇上の高まりの西側と南側にそれぞれ2m×4mのトレンチ(1・2トレンチ)を、調査地全体の遺構分布を確認するための幅1mのトレンチを2本(4・5トレンチ)設定した。周辺の竹木伐採(島村造園土木)およびトレンチ表土掘削(株式会社三立)は業者に委託した。発掘調査の結果、基壇上の高まりについては、その下層から現代の廃棄物が混じる土層が確認でき、現代に造られた人工的な盛土であることが確認できた。さらにその下層の状況を確認すべく、土壇南西端に幅1mの6トレンチを設定し掘削をおこなったところ、瓦溜遺構および小礫で充填された東西方向の溝状遺構が確認できた。これらの性格は現状では不明であるが、寺院に関連する遺構の可能性もある。その直下の小土器片が混じる水性堆積土について、株式会社パレオ・ラボに委託し放射性炭素年代測定をおこなった結果、4,857-4,729 cal BCという結果が出た。4・5トレンチについては、表土直下にコンクリートの投棄が深さ1.5m以上にわたり確認できたが、その下層の状況についてはあきらかにできなかった。8月30日には第2回の科研関係者会議を豊田市でおこない、発掘調査の現地で所見を交換しつつ、今後の方針についての打ち合わせをおこなった。 ・尾北窯関連のシンポジウム開催:2019年3月16日、古代土器研究会・東海土器研究会との共催で、愛知県埋蔵文化財センターの協力のもと、シンポジウム「北丹波・東流遺跡と8世紀の須恵器生産」を開催した。分担者の尾野などが研究報告をおこない、尾張における美濃産須恵器の展開などについて議論をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
伊保廃寺の発掘調査においては、残念ながら基壇上の高まりは古代まで遡らないことが判明したが、その下層に瓦溜等の遺構が検出できたことは、次年度の発掘調査へ向けての大きな成果である。 また、窯業を中心とした生産遺跡についての研究も、シンポジウムの開催を重ねつつ順調に進行している。 東山窯遺物の整理作業については現在進行中であり、来年度の報告書刊行へ向け継続して作業を進める。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果を承け、来年度以降は以下のとおり研究を遂行する。 ・伊保廃寺の発掘調査:本年度の発掘調査成果を承けつつ、とくに土壇下層の瓦溜遺構および溝状遺構の広がりを確認すべく、調査をおこなっていく。調査は2020年度までを予定している。作業にあたっては、表土掘削等は専門業者を入れ、大学院生等を調査・整理にあたっての補佐員として雇用しつつおこなっていく。また、発掘調査の状況については、随時現地説明会を開催し、成果の地元住民への還元を図り、また発掘調査事業への理解を求めていく。また成果について、文献史学の立場から三舟、古尾谷らの助言をうける。 ・東山窯出土遺物の分析整理:「生産」チームの梶原を中心に、研究協力者の永井、大西の助力をうけつつおこなっていく。名古屋大学考古学研究室がおこなった東山39号窯の調査成果についての報告書刊行を目指すとともに、あらたに本学大学院生の井上隼多を研究協力者とし、猿投窯須恵器の編年の再構成も視野に入れつつ作業をおこなっていく。 ・須恵器生産に関するシンポジウムの開催:「生産」チームの尾野を中心に、梶原、古尾谷および研究協力者の大西、森などが関わりつつ、継続しておこなっていく。尾野を中心に猿投窯須恵器に関する基礎資料のデータ収集をおこない、先述の東山窯出土遺物の整理成果も加味しつつ、1回もしくは複数回のシンポジウムを開催する。
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