研究課題/領域番号 |
17H02415
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
大坪 志子 熊本大学, 埋蔵文化財調査センター, 准教授 (90304980)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 縄文時代後晩期 / クロム白雲母 / 玉 / 製作 / 工房 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に実施した試掘の成果から、2地点での本調査を計画した。発掘時期は、各地点の現況(耕作物の時期)に合わせて2回に分けて実施した。 8月、耕作のない久川地区(久川氏所有地内)で発掘調査を実施した。本地点は、玉製品や石材が採集されているビニールハウス群の東隣地である。昨年のトレンチ調査で遺物と炭化物、住居状掘り込みを確認した地点を中心にグリッドを設定して掘削した。しかし、住居にしては、遺物(土器・石器)の量が非常に少なかった。縄文時代の住居の調査・事例に精通する、協力者(水ノ江和同氏)と協議し、自然地形(窪み)と判断した。ビニールハウス群の西側にも、トレンチを設定して掘削をおこなった。こちらでは住居(または土坑)と考えらえる遺構を3基検出した。底部の窪みには、上位の埋土とは異なる砂質土壌が溜まっており、今後分析を行う。住居の可能性がある遺構からは土器・石器が多数出土したが、玉の製作を示すような遺物の出土は1点のみ(まだ、整理段階中である)。 3月、休耕期間にはいった工藤地区(工藤氏所有地内)での調査を実施した。震災対応のため、調査期間の調整が困難となり、今回は次年度に向けた遺構深度・土量確認の試掘調査をとした。昨年度に住居と考えられる掘り込みを確認した場所にグリッドを設定した。昨年度のトレンチを面的にひろげ、小トレンチにて地山層まで掘削を行ったところ、ここも自然地形によると考えられた。他に2カ所、トレンチを設定したが、同様であった。工藤地区は、遺物(土器片)がかなり散布しており、久川地区より一段高いため、削平が浅いと予想されたが、実際には工藤地区の畑地のほうが、圃場整備時の削平のダメージが大きいこことが確認された。 久川地区西側での調査成果とこれまでの採集状況から、玉製作を行った工房はビニールハウス群の地下および西側に遺されていると想定される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査は概ね、予想通り実施できている。しかし、震災対応中であり、その本務の発掘調査は、工事の工程・進捗に合わせなければならないため、耕作期間との調整が非常に困難である。本年度は、緊急的に発生した震災対応業務が、2回目(工藤地区)の調査予定期間と重なったため、工藤地区の調査を受けての、代替地点の試掘を行えなかった。 また、久川地区の西側の地点では、遺構を確認することができたが、クロム白雲母(材料・未製品・剥片等)の出土がない。これは、どの住居でも玉の製作を行ってはおらず、特定の住居で製作を行っていた可能性を示す、新しい知見ではある。玉の製作を具体的資料で復元することを目指す本研究では、予想外の成果である。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は、久川地区西側地点のさらに西側の調査を実施する予定である。また、地域住民から久川地区の南側に位置する畑地でも、玉類の採集例があり、圃場整備が実際には未実施だったという情報提供があったため、その畑地での調査を実施する予定である。土地所有が、いずれも変わるため、協力が得られれば、計画を進めていく。このほか、熊本県下の太郎迫遺跡も調査対象として予備調査を検討しておく。
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