研究課題
本研究は,平城宮・京跡出土木簡を対象とした年輪年代学的な同一材推定,及び荷札木簡を用いた地域標準年輪曲線を構築することにより,木簡から考古資料としての新たな価値を引き出し,考古学・古代史学・年輪年代学が融合した研究を推進する。より具体的な目的は,次の2点に絞られる。1)年輪年代学的な同一材推定により,木簡やその削屑の同一材関係や,刻まれる年輪の新旧関係を明らかにする。そして新たに接合に成功した木簡について釈読を再検討するとともに,木簡の加工技術・製作過程を復元する。2)全国から平城宮・京に集まる荷札木簡について,記載地名ごとに年輪曲線を整理し,地域標準年輪曲線を作成する。そして年輪変動の地域特異性を明らかにすることで地域区分し,古代における年輪年代学的な産地推定を行う基盤を構築する。研究初年度は,分析対象木簡の選定,年輪画像の撮影・年輪計測,同一材推定の分析に力を入れた。まず分析対象は,奈良文化財研究所都城発掘調査部がおこなった平城第524次調査において出土した木簡群を主な対象とした。年輪幅の計測は,分析対象を接写撮影し,Cybis社製年輪計測ソフトCooRecorderを用いておこなった。クロスデーティングは,SCIEM社製年輪分析ソフトPASTを用いておこない,年輪曲線をプロットしたグラフの目視評価と,統計評価をあわせておこなった。その結果,削屑木簡の同一材推定に成功し,これまで明確ではなかった木簡の接合関係を見出すという成果が得られた。この成果は,関連学会などで速報的に発表し,日本文化財科学会第11回ポスター賞を受賞することができた。
1: 当初の計画以上に進展している
研究初年度である2017年度は,分析対象木簡の選定,年輪画像の撮影・年輪計測,同一材推定の分析中心におこなう計画であった。研究実績の概要であげたとおり,削屑木簡の同一材推定に成功し,これまで明確ではなかった接合関係を見出すという成果が得られ,関連学会から表彰を受けるなどの成果があがっており,当初の計画以上に進展していると判断した。
研究2年目である2018年度は,初年度に引き続く年輪画像撮影・年輪計測,及び同一材推定の成果を踏まえた木簡釈読の再検討と,荷札木簡を用いた地域標準年輪曲線の構築,各地収蔵木簡の調査を中心に進める。1次データとなる年輪幅データの計測は,本研究課題の根幹となるものであり,継続的に作業を進める。また,年輪年代学的な同一材推定を踏まえ,これまで1つ1つの文字としてしか捉えられていなかったものを,単語や文章として捉え直していく。これまでに平城第524次調査で出土した削屑木簡に同一材と認定できるものを複数,見出しつつあり,これらの接合検討をもとにした再釈読をおこなう。全国各地から集まる荷札木簡を用いた古代における地域標準年輪曲線の構築は,参河由来の荷札木簡について検討を進める。さらには,平城宮・京跡で出土した荷札木簡を用いて構築した地域標準年輪曲線と,各地で出土する木製品の年輪データの比較をおこなうべく,各地収蔵木製品の調査をおこなう。初年度に予備調査をおこなったが,多賀城跡に対象となる木製品が多数収蔵されていることが明らかとなったため,追加調査を進めるとともに,さらなる試料探索を継続する。
すべて 2018 2017
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