災害に伴う地域の超長期的な変動の比較研究：東日本大震災被災地を事例に

2018 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 17H02434
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 木村 周平 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (10512246)
• 研究分担者: 石榑 督和 東京理科大学, 工学部建築学科, 助教 (10756810) ; 青井 哲人 明治大学, 理工学部, 専任教授 (20278857) ; 中野 泰 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20323222) ; 浅野 久枝 京都精華大学, 人文学部, 講師 (20700008) ; 川島 秀一 東北大学, 災害科学国際研究所, シニア研究員 (30639878) ; 饗庭 伸 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (50308186) ; 岡村 健太郎 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (50737088) ; 小谷 竜介 東北歴史博物館, 学芸部, 副主任研究員 (60754562) ; 池田 浩敬 常葉大学, 社会環境学部, 教授 (80340131)
• 研究期間 (年度): 2017-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: 災害 / 景観変容 / 復興 / 民俗

研究実績の概要

科研として2年目である今年度は、計画通り陸前高田市小友町での調査を進めることを目標に計画を立てた。
まず全体で日程を調整し、2018年6月30日に首都大秋葉原サテライトにおいて第１回研究会を行った。そこでは、本科研開始以前より小友町において調査を行ってきた民俗学チームから、建築史、防災、都市計画の各チームに対して情報提供をしつつ、夏の調査において何を行うかを検討した。その結果、建築史チームは地区の東部を中心とした古い家屋の実測、防災チームは、地区の東端・西端の海に面した集落における、東日本大震災時の避難経路の聞き取りや、災害伝承についての調査、そして都市計画チームは、道路や鉄道の整備を中心にしつつ、地区西部の埋め立てやコンビナート建設計画も含めた、地区全体での空間的な変容についての調査、文化人類学では、地域組織のあり方について調査することとした。また民俗チームは、これまでの調査を踏まえて、本科研のテーマである地域変容について調査を行うこととした。
夏季調査は、メンバーそれぞれの都合から、９月前半と後半の２班に分けて行った。前半には民俗学チーム（川島・浅野）と、建築史（石榑・岡村）・防災（池田）・文化人類学（木村）の各チームが調査を行った。後半には、都市計画チーム（饗庭）が、民俗学チーム（小谷）とともに調査を行った。また夏季調査に参加できなかった中野・辻本・青井はそれぞれ、12月～1月の間に調査を行った。
その後、2019年2月11日に研究会を行い、今年度の調査成果を共有し、次年度に向けた計画を議論した。そこでは、学際的な調査を行うこと、また成果を地域還元することを重視するという方針が確認された。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度にも述べた通り、本科研は申請時より予算が大幅に減額され、一部計画の見直しを行わざるをえなかった。だが今年度も、当初計画していた小友地区において合同調査を実施することができた。そこでは多分野の研究者の共同により、相互に新たな見方を学び合う機会があり、また調査は現地の方々のご協力によって円滑に遂行することができた。
今年度も論文等の形で成果の公刊に至ったものは多くはないが、調査データが蓄積され、また議論も進んだので、次年度以降に公刊が進むものと考えられる。

今後の研究の推進方策

本研究は大船渡で調査を行ってきた都市計画・建築史・文化人類学の研究者と、陸前高田で調査を行ってきた民俗学の研究者が合同で行っているものであり、双方の地域についての調査蓄積には差がある。そのため今年度は民俗学の研究者がその他の研究者をアテンドする形で調査を行ったが、それによる相互的な対話がきわめて有意義であった。
次年度は、上述の通り、学際的な調査を行うこと、また成果を地域還元することを重視しつつ、小友での調査を継続する。

研究成果

• [雑誌論文] 専門家による復興支援と情報共有 (2019)
  • 著者名/発表者名: 饗庭伸
  • 雑誌名: 東日本大震災合同調査報告書 建築編 巻: 11 ページ: 207-211
• [雑誌論文] 漁撈技術の復興とは何か (2019)
  • 著者名/発表者名: 川島秀一
  • 雑誌名: 仙台ワークショッププロシーディングス 巻: 無し ページ: 77-80
• [雑誌論文] 紫紺の海・カツオの海―カツオの起源伝承をめぐって (2019)
  • 著者名/発表者名: 川島秀一
  • 雑誌名: 歴博共同研究「海の生産と信仰・儀礼をめぐる文化体系の日韓比較研究」報告集 巻: 無し ページ: 未定
  • 査読あり
• [雑誌論文] 和船の復元と漁労の復興 (2019)
  • 著者名/発表者名: 川島秀一
  • 雑誌名: 歴博共同研究「震災復興研究会」報告書 巻: 無し ページ: 未定
  • 査読あり
• [雑誌論文] 山口弥一郎の岩手県旧綾里村における津波調査ノート（一九三五年）について (2019)
  • 著者名/発表者名: 辻本侑生
  • 雑誌名: 福島の民俗 巻: 47 ページ: 141-154
• [雑誌論文] 磐梯町所蔵・山口弥一郎旧蔵ノート －解題と目録ー (2019)
  • 著者名/発表者名: 内山大介・大里正樹・山口拡・辻本侑生
  • 雑誌名: 『福島県立博物館紀要』 巻: 33 ページ: 79-112
• [雑誌論文] 災害復興を担う主体をめぐってー岡村健太郎『「三陸津波」と集落再編』を端緒にー (2019)
  • 著者名/発表者名: 辻本侑生
  • 雑誌名: 現代民俗学研究 巻: 11 ページ: 87-79
• [雑誌論文] 東日本大震災における文化遺産の被災と対応－被災博物館の対応を中心に (2019)
  • 著者名/発表者名: 小谷竜介
  • 雑誌名: 『文明』 巻: 特別号2018 ページ: 37-42
• [雑誌論文] The significance of rescuing Intangible Cultual Heritage (2019)
  • 著者名/発表者名: Ryusuke Kodani
  • 雑誌名: Proceeding of the Asia-Pacific Regional Workshop on Intangible Cultural Heritage and Natural Disasters 巻: なし ページ: 67-73
• [雑誌論文] 地域社会の災害復興と「復興儀礼」：津波被災地のある「失敗」事例から (2018)
  • 著者名/発表者名: 木村周平、辻本侑生
  • 雑誌名: 現代民俗学研究 巻: 10 ページ: 1-16
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] 釣師浜の震災前後の漁業 (2018)
  • 著者名/発表者名: 川島秀一
  • 雑誌名: 東北民俗 巻: 52 ページ: 13-22
• [雑誌論文] 『山口弥一郎伝』の執筆を目指して (2018)
  • 著者名/発表者名: 辻本侑生
  • 雑誌名: 『ふぉーらむ・F』（福島県民俗学会ニュースレター） 巻: 8 ページ: 4
  • オープンアクセス
• [学会発表] ケンケン漁の始まりと伝播 (2019)
  • 著者名/発表者名: 川島秀一
  • 学会等名: 日本カツオ学会
• [学会発表] 日本の災害文化 (2019)
  • 著者名/発表者名: 川島秀一
  • 学会等名: 韓国民俗学会
• [学会発表] 被災物と災害前の地域文化 (2019)
  • 著者名/発表者名: 小谷竜介
  • 学会等名: 災害から生まれた物：遺体、慰霊、遺族、異物
• [学会発表] The Influence that the Legacy of Urban Planning Gave to Current Sanriku Coastal Villages (2018)
  • 著者名/発表者名: Kentaro Okamura
  • 学会等名: IPHS（国際都市計画史学会）
  • 国際学会
• [学会発表] 「契約会」文書より見る「漁村」 ―岩手県大船渡市の事例から― (2018)
  • 著者名/発表者名: 中野泰
  • 学会等名: 水産史研究会
• [学会発表] 津波常習地の漁業集落移動をめぐる歴史意識と歴史実践－気仙地方における景観復原調査の過程から－ (2018)
  • 著者名/発表者名: 辻本侑生
  • 学会等名: 水産史研究会
• [学会発表] 漁労技術の復興とは何か (2018)
  • 著者名/発表者名: 川島秀一
  • 学会等名: Asia-Pacific Regional Workshop on ICH and Natural Disasters
  • 国際学会
• [学会発表] 災害と共に生きた島々 (2018)
  • 著者名/発表者名: 川島秀一
  • 学会等名: 金曜フォーラム「北海道南西沖地震から25年、日本海・離島の災害研究」
• [学会発表] Significance of Rescuing Intangible Cultural Heritage (2018)
  • 著者名/発表者名: Ryusuke Kodani
  • 学会等名: ASIA‐PACIFIC REGIONAL WORKSHOP ON INTANGIBLE CULTURAL HERITAGE AND NATURAL DISASTERS
  • 国際学会
• [学会発表] Regional Culture to Covert into Cultural Property, Locul Culture not to Covert into Cultural Property (2018)
  • 著者名/発表者名: Ryusuke Kodani
  • 学会等名: Disaster Perceptions and Responses in Times of Global Upheaval
  • 国際学会
• [図書] 震災復興の公共人類学 (2019)
  • 著者名/発表者名: 関谷 雄一、高倉 浩樹
  • 総ページ数: 304
  • 出版者: 東京大学出版会
  • ISBN: 978-4-13-056118-1
• [図書] モダンデザインが結ぶ暮らしの夢 (2019)
  • 著者名/発表者名: 住田 常生、小谷 竜介、大村 理恵子
  • 総ページ数: 117
  • 出版者: Opa Press
  • ISBN: 978-4908390067
• [図書] 21世紀の文化人類学 (2018)
  • 著者名/発表者名: 前川 啓治、箭内 匡、深川 宏樹、浜田 明範、里見 龍樹、木村 周平、根本 達、三浦 敦
  • 総ページ数: 384
  • 出版者: 新曜社
  • ISBN: 9784788515826
• [図書] 渋沢敬三 小さき民へのまなざし (2018)
  • 著者名/発表者名: 川島秀一
  • 総ページ数: 232
  • 出版者: アーツアンドクラフツ
  • ISBN: 978-4908028342
• [図書] 工芸継承－東北発、日本インダストリアルデザインの原点と現在 (2018)
  • 著者名/発表者名: 日高 真吾, 小谷 竜介
  • 総ページ数: 187
  • 出版者: 国立民族学博物館