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2017 年度 実績報告書

ASEAN共同体発足と異形の「憲法」像の登場

研究課題

研究課題/領域番号 17H02444
研究機関名古屋大学

研究代表者

鮎京 正訓  名古屋大学, 法学研究科, 名誉教授 (40126826)

研究分担者 國分 典子  名古屋大学, 法政国際教育協力研究センター, 教授 (40259312)
KUONG TEILEE  名古屋大学, 法政国際教育協力研究センター, 准教授 (80377788)
島田 弦  名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (80410851)
中村 真咲  名古屋経済大学, 経営学部, 教授 (50402392)
瀬戸 裕之  新潟国際情報大学, 国際学部, 准教授 (90511220)
牧野 絵美  名古屋大学, 法学研究科, 特任講師 (00538225)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードASEAN人権宣言 / ASEAN憲章 / 憲法裁判所 / 立憲主義 / 比較法
研究実績の概要

平成29年度の研究においては、ASEANの段階的な発展過程から、アジア諸国の憲法動向や立憲主義についての議論を整理し、ASEAN共同体時代へと至る各国の憲法動向を検証することにより、憲法動向や立憲主義を単に国内的な動向にとどまらず、アジア全体の地域的要素も加えて考察ことを目標とした。そして、具体的には、以下のような研究を実施した。
1.ベトナム、カンボジア、ミャンマーなどの憲法裁判所をめぐる基本文献の研究などを行った。とりわけ、ミャンマーについては、憲法および憲法裁判所法の邦語翻訳を行い、また、カンボジアについては、比較法的な観点からカンボジア憲法院の動向に関する調査を行った。ベトナムについては、2013年憲法をめぐる基本動向を、1992年憲法との関連において考察し、ベトナムにおける憲法評議会設立の動向とその失敗に関する動向を検討した。
2.比較法的な観点から、ウズベキスタンをはじめ、脱社会主義化の道を歩む旧ソ連の構成地域に関する憲法および立憲主義の研究会を行った。特に憲法と立憲主義をめぐる旧ソ連構成国家における理論動向を紹介・分析することによって、立憲主義概念の現代的な意義について検討を行った。さらに、韓国における立憲主義概念の近年の動向を紹介・調査することによって、かつての軍事政権から民主化へと至ったアジアの一つの典型である国家の理論動向を分析した。ラオスについては、ラオス法学部における代表的な教科書の憲法概念の定義付けを中心に紹介・検討を行い、さらに法治国家概念についても同様の検討を行った。インドネシアについては、ASEAN人権憲章の成立過程の研究を中心に、ASEAN事務局と連携をしながら研究を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

元来、アジアにおける人権、憲法および立憲主義にかんする研究は、日本の法律学においてはきわめて立ち遅れた状況にあった。その理由は、第1には、アジア諸国の上述の課題に接近しようとする場合には、言語にかかわる問題があった。第2には、本プロジェクトの研究対象国においては、情報公開の度合いがきわめて低く、それらの問題に関する論点を調査する際に大きな制約がある。本研究プロジェクトは、その2つの障壁を克服しうる能力を持つメンバーによって構成されているとは言え、特に第2の情報へのアクセスという点において、いまだ十分な状況にあるとは言えないという問題点が存在している。それらの制約を打破するために、本プロジェクトにおいては、従来から連携してきた大学法学部、司法省など法的諸機関ならびにそれらの機関に所属するメンバーの協力を得てきたが、十分な情報を獲得するには、さらなる努力が必要とされる。
とはいえ、本プロジェクトの遂行にあたっては、現地の大学法学部、司法省、憲法裁判所などの協力を得て、プロジェクトを進展させたことによって、従来の日本には紹介されてこなかった貴重なさまざまな新しい情報を得ることができた。さらに、なかなか一般市販の書籍では入手できない情報、文書も入手することができたことによって、新しい知見を研究に加えることが可能となった。したがって、当初の目標としたところは、おおむね達成できた、と言えよう。

今後の研究の推進方策

今後の研究、とりわけ平成30年度の研究は、以下の通りである。
(1)憲法、人権、立憲主義をめぐるアジアの対象諸国における議論の動向をさらに一層研究し、明らかにしていく。この点では、ベトナムについては、2013年憲法をめぐる諸議論、とりわけその一つの中核としての憲法評議会をめぐる憲法制定過程における論争の経緯を明らかにする。同時に、ベトナムでは、1946年憲法の性格付けをめぐる論争が起こっており、フランス植民地支配下の1930年代以降の立憲主義学派の理論動向の再評価が行われており、それらの歴史研究が、現代憲法、立憲主義の理論動向に与える影響は小さくない。その意味で、立憲主義という観点から1946年憲法を再評価する理論動向をフォローしていくことも重要な研究課題ある。また、ラオス、カンボジア、ミャンマーについては、旧来の社会主義的、軍事政権的な憲法概念からの離脱を、現在どのように図ってきているのかという観点から、同様の経験を経た韓国、モンゴル、インドネシアの憲法理論との関連で検討を行う。特に、「闘う民主制」(韓国)、「パンチャシラ」(インドネシア)など、「国是」ともいえる憲法原則に注目することが、一つの考察対象である。
(2)ASEAN共同体との関連では、ASEAN人権憲章の歴史的経緯の研究はもちろんのこと、インドネシアの大学、研究機関を中心に、アジア諸国の研究者とも連携し、ASEAN全体の憲法、人権、立憲主義をめぐる動向を研究する。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (7件) (うちオープンアクセス 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件) 図書 (4件)

  • [雑誌論文] 韓国臨時政府憲法文書における国家構想2018

    • 著者名/発表者名
      國分典子
    • 雑誌名

      名古屋大学法政論集

      巻: 277 ページ: 217ー240

    • DOI

      http://doi.org/10.18999/nujlp.277.10

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 法整備支援ーアジアから新しい法秩序を考えるー2018

    • 著者名/発表者名
      牧野絵美
    • 雑誌名

      中京大学評論誌・八事

      巻: 34 ページ: 78-84

  • [雑誌論文] 韓国におけるテロ対策立法2017

    • 著者名/発表者名
      國分典子
    • 雑誌名

      論究ジュリスト

      巻: 21 ページ: 70ー78

  • [雑誌論文] インドネシア裁判官任用の変遷:インドネシアにおける官僚的司法のルーツに関する研究ノート2017

    • 著者名/発表者名
      島田弦
    • 雑誌名

      名古屋大学法政論集

      巻: 272 ページ: 327-349

    • DOI

      http://doi.org/10.18999/nujlp.272.14

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] インドネシアにおける法令の種類、序列および整合性に関する法的枠組み(一)2017

    • 著者名/発表者名
      島田弦
    • 雑誌名

      ICD News

      巻: 70 ページ: 95-103

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] インドネシアにおける法令の種類、序列および整合性に関する法的枠組み(二・完)2017

    • 著者名/発表者名
      島田弦
    • 雑誌名

      ICD News

      巻: 71 ページ: 69ー78

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] (翻訳)モンゴル国憲法2015年改正草案2017

    • 著者名/発表者名
      中村真咲
    • 雑誌名

      名経法学

      巻: 39 ページ: 1-15

  • [学会発表] Revisiting the freedom of expression in Indonesia: Socio-legal review of oppression against freedom under the New Order and its continuity2017

    • 著者名/発表者名
      Shimada Yuzuru
    • 学会等名
      IANC’s 1st Conference on Socio Legal Studies
    • 国際学会
  • [学会発表] Civil and Political Rights in Indonesia under old and new constitutionalism: Comparing human rights situation in the Soeharto regime and the Reformation era2017

    • 著者名/発表者名
      Shimada Yuzuru
    • 学会等名
      Asian Law and Society Association (ALSA) Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] ラオス中部における被戦争社会の 変容とレジリエンスー戦争期の住民移住を中心にー2017

    • 著者名/発表者名
      瀬戸裕之
    • 学会等名
      東南アジア学会関西例会
  • [図書] ASEAN諸国の法学教育調査報告書2018

    • 著者名/発表者名
      コン・テイリ、牧野絵美ほか
    • 総ページ数
      346
    • 出版者
      法務省法務総合研究所
  • [図書] 日本とアジアをつなぐ―法整備支援のすすめ2017

    • 著者名/発表者名
      鮎京正訓
    • 総ページ数
      160
    • 出版者
      旬報社
    • ISBN
      978-4845115099
  • [図書] 現代アジア学入門:多様性と共生のアジア理解に向けて2017

    • 著者名/発表者名
      鮎京正訓ほか
    • 総ページ数
      220(151-164)
    • 出版者
      芦書房
    • ISBN
      978-4755612855
  • [図書] 戸波江二先生古稀記念 憲法学の創造的展開(下巻)2017

    • 著者名/発表者名
      國分典子ほか
    • 総ページ数
      734(529-548)
    • 出版者
      信山社
    • ISBN
      978-4797280739

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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