研究課題/領域番号 |
17H02466
|
研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
石塚 伸一 龍谷大学, 法学部, 教授 (90201318)
|
研究分担者 |
笹倉 香奈 甲南大学, 法学部, 教授 (00516982)
武内 謙治 九州大学, 法学研究院, 教授 (10325540)
佐藤 舞 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (20761092)
森久 智江 立命館大学, 法学部, 教授 (40507969)
本庄 武 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (60345444)
深谷 裕 北九州市立大学, 地域戦略研究所, 准教授 (60435732)
菊山 明子 (古川原明子) 龍谷大学, 法学部, 准教授 (60440187)
中村 悠人 東京経済大学, 現代法学部, 講師 (90706574)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 終身刑 / 無期受刑者 / 保安処分 / 危険社会 / 再犯リスク / 改善可能性 / 社会復帰 / 社会化 |
研究実績の概要 |
龍谷大学を本部として、4回の全体研究会を開催し、無期調査(本庄班)、海外調査(古川原班)および処遇調査(森久班)の3つのユニットがそれぞれの調査研究を実施するとともに、連携・協力して研究組織全体の目的である「処遇の社会化」の視点から、汎用性のある社会復帰プログラムを提案するための体制が整備された。なお、全体の調査研究能力を増強するため、4名の研究協力者を増員した。 本庄班では、長期刑務所の調査(2か所)、元受刑者の社会復帰を支援する「アフター・プリズン・サポート(APS)」の開催(16回)、犯罪社会学会でのラウンドテーブル「長期受刑者の社会復帰についてー無期受刑者処遇の社会化ー」および「死刑と無期の間ー終身刑問題をどう考えるかー」の企画(2017年9月)ならびに(4)浜井浩一(編)『犯罪をどう防ぐか(シリーズ刑事司法を考える・第6巻)』(岩波書店、2017年5月)、本庄武・武内謙治編著『刑罰制度改革の前に考えておくべきこと』(日本評論社、2017年12月)などの編著および学術雑誌に理論研究の成果を発表した(11本)。また、イギリス、フランス、ドイツなどについての比較法的研究や英語論文も発表している。 古川原班では、イギリス、ドイツ、アメリカおよびカナダについて、資料収集・文献調査・実地調査等を実施し、イギリスについては論文、アメリカについては学会報告などによって、第一次成果を発表した。 森久班では、治療共同体的処遇の可能性を検討するため、施設職員の聴き取り調査;(2施設)、受刑体験者の聴き取り調査などを実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2017年度は、4年の研究期間の初年度であることから、「実施体制の整備と調査研究の開始」を目標に、採択決定直後の2017年4月に全体会議を開催し、龍谷大学に本部を置いて事務局体制を確立し、研究協力者:研究補助者を増員して拡充を図り、各ユニットの研究計画をより具体化した。その結果、各ユニットを中心に速やかに計画の実施に着手することができた。 研究参加者間のコミュニケーションを円滑にするため、メーリングリストを立ち上げ、重要事項については、2017年10月と2018年1月に開催した全体会で研究会協議の上決定し、同年3月の期末会議で総括した。研究の進捗・予算の執行等については、龍谷大学矯正・保護総合センターの研究会議で報告することで研究計画の実施についての適正を確保している。 文献調査および資料収集については、海外の研究者との連携も順調に進んでいる。実態調査については、無期調査ユニットは、長期受刑者の処遇と釈放、社会への受入れ体制について、現状と課題を調査するため2施設の訪問調査を実施した。処遇調査ユニットでも、刑事施設での治療共同体的処遇の可能性を検討するため、施設職員や受刑体験者からの聴取り調査を実施した。また、社会復帰を支援することを目的とする研究会APSを立ち上げて継続的に体験の聴取りを実施するほか、支援の社会実践活動にも協力している。海外での実態調査については、英国のカーディフ、カナダの旧刑務所・精神医療施設などの調査も行なった。 以上のように、当初予定の「実施体制の整備」については、組織体制やスタッフにおいて計画以上の整備ができた。また、「調査研究の開始」についても、単なる着手にとどまらず、研究計画がより具体化し、パイロット段階から、本格的な調査の段階へと進みつつあり、その意味で、当初の計画以上に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
2017年度中にすでに本格的な調査研究が始まっているので、2018年度も、各ユニットの連携を重視し、全体会において連携と協働を確保しながら、期末期には調査研究の中間総括を目標として研究計画を進めていく。なお、本研究には、研究分担者のほか、藤岡淳子(大阪大学・処遇計画〔施設内処遇])、浜井浩一(龍谷大学・処遇計画〔社会内処遇〕)、佐藤元治(岡山理科大学〔無期調査〕)、相澤育郎(立命館大学〔同〕)、高橋有紀(福島大学〔同〕)および丸山泰弘(立正大学〔海外調査〕)が研究協力者として加わっている。 無期調査ユニットは、日本の長期受刑者等の処遇と釈放、社会への受入れ体制について、現状 と課題を調査することを目標としている。全国の長期収容施設(LA、LB)の訪問調査、元受刑者、研究者、実務家との研究(After Prison Support:APS)の実施、無期受刑者の聴取り調査なを引続き実施する。 海外調査ユニットは、英国(佐藤舞、石塚)・ドイツ(武内、石塚)・北アメリカ(笹倉、古川原)、アメリカ(丸山)が調査研究を実施している。本年度は、海外から研究者を招聘して、共同研究体制の確立をめざしている。 処遇調査ユニットは、まず刑事施設の実態を破格するため、施設職員の聴取り調査を中心に調査研究を進めている。試みに、受刑体験者が加わった”えんたく”(フォーカス・グループ)形式の研究会等を実施している。このように研究計画の実施全体を俯瞰すれば、各研究グループが相互に共同して、日本の現行プログラムおよび海外の先進的プログラムの調査を行なっているといえる。 本年度は、これまでの研究成果を発表し、挑戦的な実験を展開するため、学会等で積極的に成果発表をする予定である。また、研究の進捗状況を確認し、研究期間後半の調査研究の目標を明確化するため、公開シンポジウムの開催を検討している。
|