研究課題/領域番号 |
17H02473
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
町村 泰貴 成城大学, 法学部, 教授 (60199726)
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研究分担者 |
稲垣 美穂子 北海学園大学, 法学部, 准教授 (00612467)
山木戸 勇一郎 北海道大学, 法学研究科, 准教授 (20623052)
酒井 博行 北海学園大学, 法学部, 教授 (80382472)
長屋 幸世 北星学園大学, 経済学部, 教授 (90405647)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 民事手続 / 情報 / IT / 秘密保持命令 / 発信者情報開示 / デジタル・フォレンジック / ADR |
研究実績の概要 |
2018年度は、4回の研究会において、研究分担者および研究協力者から民事手続の各分野にまたがるテーマの報告をいただいた。 具体的には、まず判決手続に関して裁判手続のIT化の現状と情報の取扱い、不当に取得された情報の訴訟手続内におけるコントロール、秘密保持命令と仮処分、そして訴訟資料のインターネット公開と不法行為の成否の各テーマを相互に報告して検討した。そこでは、IT化に伴って判決手続における法廷の公開や記録の公開のあり方が議論となり、本研究会の基本的なテーマである利用と保護の緊張関係がより一層先鋭化することが示された。また訴訟資料のインターネット公開の問題は、倒産法分野でも個人破産の事実を官報から収集してネット上に公開するということとの当否とも関連し、裁判の公開とプライバシー保護との両立の困難性が明らかになった。 また執行手続については、上記の秘密保持命令と仮処分のほか、発信者情報開示請求訴訟・仮処分の実務上の問題点、そして中国におけるオンライン競売の実施状況についての報告があった。特に中国におけるオンライン競売の進展は、我が国の立法においても参考となりうるものである。 倒産処理手続では、財産情報の隠匿と破産犯罪の問題、デジタル社会において破産者の財産情報を管財人が取得することの困難性、そしてデジタル・フォレンジック技術の管財人による利用可能性を取り上げた。 そのほか、裁判外紛争解決手続に関してはイングランドのwithout prejudice ruleと和解過程の情報の裁断型手続への流用の可否、家事調停・家事審判における文書提出命令と秘密保護、性暴力やDV被害者の保護のための氏名・住所秘匿と民事・家事手続についての研究報告を行った。 この研究の公開は、雑誌・図書の公表に加え、2018年度の情報ネットワーク法学会研究大会においても分科会を組織して報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度までの研究では、当初の計画において示していたように、民事手続の各分野において、それぞれの法目的に照らして特有の問題が、情報の利用と保護との緊張関係となって現れていることを幅広く取り上げることができた。 今後の作業は、これまで明らかになってきたところをさらに理論的に検討し、民事手続全体としての理論的な支柱をたてるとともに、比較法的な研究と外国研究者との意見交換などを行う事となるが、2018年度までの研究内容はそうした理論的な研究や比較法的な研究のための材料をかなりの程度まで収集することができたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方法は、2018年度までの知見を理論的に整理することや、比較法的な考察および外国研究者との意見交換を行うこととなる。 日本の民事訴訟法は、母法国がドイツであることは言うまでもないが、民事手続という法現象は必ずしもドイツ特有のものではなく、裁判所における裁判、強制執行、倒産といった制度は英米法であれフランスなどのラテン法国であれ、共通するものである。そこで本研究の比較法も、ドイツ法を取り上げることはもちろんであるが、フランスやアメリカ、イギリスといった諸国の研究者との意見交換を試みたい。
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