研究課題
基盤研究(B)
わが国で近時盛んに設定されるようになった民事信託では、信託の内容を定めるにあたって、信託の原則を無視または軽視する傾向が一部にみられ、これをそのまま放置することは、信託制度そのものへの信頼を揺るがす事態を招きかねない状況にある。これを避けるために、信託行為の無効原因を明確にすることが必要である。そのためには、私法の根本原則として信託によっても変更することができないものと、信託固有の変更不可能な規律の両方について、その内容および射程を明らかにすることが求められる。
民法
わが国において、信託は、かつて、信託銀行など専門家が受託者となり、監督官庁による監督を意識しながら慎重に行われるものにほぼ限られ、法的紛争を生ずることがあまりなかった。ところが、近時、非専門家だけで設定・運営される民事信託の設定が盛んになったことによって、状況は一変した。民事信託の効力をめぐる紛争が現に増えており、その傾向が今後さらに強まると考えられることから、信託の無効原因を明確にすることには、信託の安定した活用とそれによる取引社会の発展に多大の意義が認められる。