研究課題/領域番号 |
17H02483
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
清水 唯一朗 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 教授 (70361673)
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研究分担者 |
品田 裕 神戸大学, 法学研究科, 教授 (10226136)
飯田 健 同志社大学, 法学部, 教授 (50468873)
古谷 知之 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 教授 (60334322)
鎌原 勇太 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (70710268)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 日本政治 / 政治文化 / 政治制度 / 選挙制度 / ゲリマンダリング |
研究実績の概要 |
研究3年目となる2019年度、戦前研究ユニットでは、1994年に至る全体データをほぼ完成させることができた。そのデータをもって、いくつかの俯瞰的な成果をあげることができた。清水「国家、政党、国民―重心なきトライアングルの政治史」(『アステイオン』90号)では、戦前日本の立憲主義の構造を選挙区の構造変化から捉えなおし、国際カンファレンス「東亞人文社會科學研究的新地平線」では、「明治維新150年與日本的政治」と題してこの内容を報告し、東アジアから集まった社会科学者たちと選挙区研究に関する意見交換を進めた。これらの成果は学術論文に留まらず、学部生向けのテキストである『日本政治史』(有斐閣。清水、瀧井一博氏、村井良太氏と共著)でも、選挙制度の変遷を大きな変数として論じるかたちで教育への還元もおこなった。学会でも、日本選挙学会のラウンドテーブルで「選挙学会と政治史研究」と題して報告し、選挙研究における分野横断の必要性について一石を投じた。個別の分析としては、台湾で刊行された『日本研究的轉化與重構』(翰蘆圖書出版)に「日本的選區如何變遷」が掲載された。 戦後研究ユニットでは、飯田が、選挙区を越えた投票買収という視点で"Buying Votes across Borders?"と題してAPSAで報告し、世論・選挙調査研究大会でも、地図抽出を軸にネット調査への協力状況を分析する報告を行い、地理情報の活用可能性を広げている。同報告は『政策と調査』誌にも掲載された。品田は『政治学入門』(ミネルヴァ書房。永井史男、水島治郎と共編)を刊行し、「第2章 選挙に行こう」で選挙区制度への議論を幅広く展開した。 理論研究ユニットでは、鎌原が「「代表の不平等」(Unequal Representation)に関する新たな概念と指標の可能性」(『法学研究』93巻1号)を発表し、展開を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年ほぼ出来上がった選挙区の地理的データを用いた個別分析を始めるとともに、最終年度を見据えた包括的な研究報告や、今後の展開を見据えた対象の拡大に乗り出すことができている。一昨年度に全体の方向性を固め、昨年度は個別の研究を展開するという方針を閉めましたが、それについては順調に進めることができている。 ただし、2・3月に予定していた国際学会が新型コロナウイルスの問題によってすべてキャンセルとなった。このため、最終年度に向けた国際的な展開は、やや見通しが立ちにくくなっているのが現状である。とりわけ、プロジェクト全体の取りまとめとして位置付けている11月のEACJS@ソウルが開催されるかどうかは、大きく不安がある。 他方、2・3月の国際学会がキャンセルとなった分を用いるかたちで、懸案であった代議士の移動データについて、戦前分をまとめることができたことは大きな収穫であった。
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今後の研究の推進方策 |
上述のとおり、3年目に個別研究を進展させるという方向性は順調に展開している。そのうえで、4年目は最終年度として取りまとめを行う必要があるが、最終発表と位置付けていたものが国際学会でのパネル報告であり、その開催の是非は見通しがつかない。このため、その状況を見据えつつ、開催がされなかった場合は、年度末までにセミオープンの研究報告会を開く予定である。 とりわけ、この科研で作成したデータや地理情報を用いた選挙区研究は、今後広く行われる可能性を持ったものであり、研究代表者と分担者の個人研究に留まらず、研究資源や方法を活用できるよう、データの公開、ワークショップなどの展開を視野に入れて最終年度を進めていきたいと考えている。
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