研究課題/領域番号 |
17H02499
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
池田 新介 関西学院大学, 経営戦略研究科, 教授 (70184421)
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研究分担者 |
小島 健 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (60754827)
平田 憲司郎 神戸国際大学, 経済学部, 准教授 (70423209)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | セルフコントロール / 時間選好 / ストレス / 疲労 / 消費 |
研究実績の概要 |
課題1(誘惑に対するセルフコントロールの限界とそれに伴う心的疲労を考慮した新しい消費者行動モデルを構築する)についての成果として、投稿論文Ikeda and Ojima (2019)を査読誌(Economic Theory)からのコメントに基づいて見直し、セルフコントロールと時間選好率形成の関係を動学的最適化の観点から解析的に明らかにした改訂版を再投稿した。目下審査結果を待っている状況である。また、新型コロナ感染症の蔓延と緊急事態宣言の発令によるストレスの影響を調べるために、アンケート調査(「社会的幸福と生活感についてのインターネットトラッキング調査」)を行った。現在そのデータ解析を進めている。 課題2(消費者がセルフコントロール問題に直面する場合のマクロ経済の動学的一般均衡の特性を明らかにする)については、簡単な一般均衡モデルを用いた試論的な厚生分析をおこない、消費を誘惑する広告が消費者の厚生を損なうbadsとなる可能性を解析的に導いた。 課題3(セルフコントロールの限界に関連した政策問題を考察する)の成果として、論文池田(2019)によって、セルフコントロールと意思決定・行動の関係について、経済学、心理学、脳科学など広範な領域の研究知見をサーベイし、セルフコントロールの限界に起因する失敗行動に対する政策対応の可能性について考察した。 以上の研究知見に基づいて、池田が、西安外国語大学、NTT経営研究所など5か所でセミナー・講演をおこない、平田が、York Universityなど2か所のワークショップで研究報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
課題1についての投稿論文、Ikeda and Ojima (2019)を査読の回答に時間がかかったうえに、発展的な大幅改訂を要求されたために、再投稿が遅れ、掲載までさらに時間が要する事態となった。 課題2については、試論的に、簡単な一般均衡モデルを用いて広告の厚生分析をおこなっている段階である。過剰な消費を誘惑する広告のモデルを構築することで、本質的にはbadsであるような商品であっても、広告の利用によって生産されるような均衡があり得ることを理論的に示したいと考えている。この分析は政策含意を持つことが予想されるために、課題3とも関連している。
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今後の研究の推進方策 |
課題1の成果として、Ikeda and Ojima(2019)を国際誌に掲載すべく引き続き努力する。さらに同論文を拡張することにより、セルフコントロールの循環現象を記述するモデルを開発する。また、2020年度に実施したアンケート調査「社会的幸福と生活感についてのインターネットトラッキング調査」のデータを解析し。新型コロナ感染症の蔓延と緊急事態宣言の発令によるストレスの影響を調べていく。 課題2では、試論的なモデルを発展させた一般均衡モデルを用いて、誘惑をたかめてセルフコントロールコストを高める広告が社会的厚生損失を発生させることを明らかにしたい。 課題3では、経済社会政策を、経済構成員のセルフコントロールの限界を緩和する観点から考察していきたい。
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