研究課題/領域番号 |
17H02508
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
矢島 美寛 東北大学, 経済学研究科, 客員教授 (70134814)
|
研究分担者 |
松田 安昌 東北大学, 経済学研究科, 教授 (10301590)
三浦 良造 一橋大学, その他部局等, 名誉教授 (30107081)
中島 賢太郎 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (60507698)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 時空間計量経済学 / 時空間統計解析 / 時空間計量ファイナンス / 時空間都市・地域経済分析 / 時空間確率場 |
研究実績の概要 |
年度当初に計画した4つの課題について研究を遂行した。 第1に昨年度提案した固有定常確率場に対する新たな非等方型モデルおよび2つの推定量(Log periodogram regression estimator, Gaussian semiparametric estimator)に関して計算機シミュレーションを実行しまた実際データ解析に応用した。その結果従来提案されてきた推定法に比べモデルの特定化の誤りに対してロバストであり、安定的な推定値を得ることを明らかにした。さらに現在までに提案されている非等方型モデルとの異同について明らかにし。これらのモデルに対して非等方性の検定方法を提案した。 第2にContinuous Autoregressive Moving Average Model(CARMA Model)を超大規模非定常時空間モデルへ拡張し、時空間計量経済学、疫学、環境学への応用可能性について考察した。 第3に時空間ファイナンスデータの解析については、誤差項に分布の非対称性を考慮したセミパラメトリックモデルを当てはめた線形回帰モデルを構築し、その非対称性と回帰係数の推定精度との関係を明らかにした。その結果、通常回帰係数の推定に用いられる最小2乗法より観測値の大きさの順序に基づく順位推定法の方が理論的にも実際の株価データの解析においても優れている場合があることを指摘した。 第4に都市・地域経済分析については、集積の経済に関する分析を行った。特に集積の範囲を同定し、同定された集積についてその効果を測定した。また現実の商業集積における効果についての分析を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究業績の概要に述べたとおり、年度当初に設定した4つのテーマについて一定の成果を得た。それらを論文にまとめ一部はすでに発表あるいは受理されている。第1,2のテーマについては2018年8月マレーシア・クアラルンプールで開催された国際統計協会(International Statistical Institute)主催の国際会議で一つのセッションをオーガナイズおよび発表し、一定の評価を得た。また国内外の学会・大学において招待講演を行いやはり一定の評価を得た。 第3のテーマについてはフランス、チェコスロバキアなどの大学において客員教授として滞在し、セミナーなどを通じ研究協力を深めた。 最後に第4のテーマについては国内の大学・研究所における講演およびセミナーにおいて研究テーマの紹介および普及に努めた。
|
今後の研究の推進方策 |
非定常時空間確率場の統計的推測理論に関してはモデル選択基準の構築、種々のモデル間の異同および特性を理論的により明確にする。 非線形時空間確率場に関しては時空間計量経済学、疫学、環境学において、小規模モデルでは分析しえなかった知見を導ために、ビッグデータ解析手法を開発する。 時空間ファイナンスデータの解析については、自己回帰モデルのセミパラメトリックなアプローチを試みる。本年度に成果を得た研究と同様に、誤差項に分布の非対称性を考慮したセミパラメトリックモデルを当てはめ、自己回帰係数を順位統計量に基づいて推定する。その際に誤差項の分布の非対称性と自己回帰係数の推定精度との関係を明らかにする。 都市・地域経済分析については、本年度に引き続き、集積の経済について分析する。集積の範囲の同定法について再検討を行い、それを用いた応用分析を行う。特に集積要因の同定に注目した分析を進める。
|