最終年度は主に次の2つの分析で進展があった。 1番目に研究計画の根幹となっているマクロ時系列データの非線形トレンドの形状について、確率トレンドの有無に依存せずに正しく検定できる方法論の論文を完成させた。論文では三角関数を基底とする非線形トレンド関数の周波数選択について、モデルに含まれる周波数の数が真の周波数の数と同じか少ない場合には、効率的な一般化最小二乗推定量の残差平方和を最小にする方法が正しい周波数を漸近的に選ぶことを証明した。また、周波数を追加する場合にSup型やMean型のワルド検定統計量を逐次的に計算することで、最終的な周波数を確定できることを証明した。この論文で提案されている方法の有用性は比較的小さいサンプルサイズを用いた実験結果からも確認され、失業率データ、及び地球温暖化データを用いた実証分析に応用した。この論文は現在に国際学術雑誌に投稿中である。 2番目に実際のデータを用いたマクロ経済モデルの実証分析では、非線形DSGEモデルに基づいた自然利子率の試算の精緻化を行った。自然利子率は、完全雇用GDPに対応するような緩和的にも引締め的にもならない実質金利であり、経済構造をモデル化することで、推定することが可能である。基本モデルの結果に加えて、消費の習慣形成を考慮した場合、及びゼロ金利制約に加えて、フォワードガイダンスも含めた金融政策ルールを考慮する場合の拡張を行った。この論文は国際学術雑誌に投稿後、改訂の指示があり、現在改訂を終えて再投稿を完了している。
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