研究課題/領域番号 |
17H02518
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
中島 賢太郎 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (60507698)
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研究分担者 |
齊藤 有希子 (梅野有希子) 独立行政法人経済産業研究所, 研究グループ, 上席研究員 (50543815)
井上 寛康 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 准教授 (60418499)
岡崎 哲二 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (90183029)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | イノベーション / 空間経済学 |
研究実績の概要 |
今年度は歴史特許データの収集および電子化を中心に行った。まず、電子媒体で記録されている過去の特許データを特許庁より入手し、そのなかで特許明細書データを中心に、網羅的な電子化が可能な年次について調査を行った。それに基づいて今年度は一部年次について特許権者情報などの主要な特許書誌情報の電子化を行った。また、特許制度の歴史的変遷についての調査を行うことで、制度変化による特許出願のインセンティブ変化についての研究を進展させた。また、イノベーション活動の地理的分布を決定づけるその他要因として、経済活動の分布や、産業政策、国土政策などが想定されるが、今年度は、明治・大正・昭和期における政府統計の入手を行った。また、同時に戦前期の産業政策、国土政策についての調査を行った。これらの作業によって得られた具体的な研究構想を、共同研究者、経済産業省関係者、国土交通省関係者、および海外からの研究者を含めた研究会の機会を数回持ち、その中で研究構想の報告・議論を行うことで改善した。 並行して、現代の特許データを用いた集積の検出に関する研究について、分析の精緻化を進め、現代のイノベーション活動が地理的に集積していること、および、総売上に占めるR&D投資シェアによって定義した技術のハイテク度が高い産業ほど地理的に集積していることなどを統計的に示した。この結果は、国際的査読誌であるJapan and the World Economyに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の主要な予定は、歴史特許データの収集および電子化によるデータベース整備を行うことであった。そのなかで予算計画通りの範囲で特許データの電子化、およびそのクリーニングによるデータベース整備を進めることができた。また、今年度は上記の作業と並行して、特許制度の歴史的変遷についての調査、戦前期の産業政策、国土政策についての調査を行い、本研究課題の中心となる、イノベーション活動のインセンティブおよび地理的分布の決定要因を理解する上で重要となる制度的要因についての情報を収集することができた。また、当時の経済活動データとして、明治・大正・昭和期における政府統計の入手を行うことができた。さらに現代の特許データを用いた集積の検出に関する研究について、分析の精緻化を進め、国際的査読誌であるJapan and the World Economyに掲載することができた。以上より、本研究課題が計画していた今年度の研究計画は全て達成することができたという点でおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に記載したとおり、平成30年度は引き続き、特許データベースの電子化およびクリーニングによるデータベース化を中心として行う。平成29年度の調査によって、ある年次以降の特許情報については、発明者情報などの主要な特許情報が一定程度網羅的に取得できることが明らかになった。平成30年度はそれに基づき、特許情報が網羅的に取得できる範囲の年次における特許情報の電子化を重点的に進める。平成29年度に、既に特定の年次について、部分的に歴史特許データの電子化を開始しており、その一部は既に電子化が完了している。平成30年度はこれらの先行データのクリーニングを行い、記述統計の作成、地図の描画等、データの概要、特性を把握する作業を行う。特に発明者の住所情報をクリーニングし、地理情報システムによって、精度の高い緯度経度情報を付与することで、当時のイノベーション活動の集積地を同定し、さらにこの集積地の時間を通じた移り変わりの同定や、集積を形成している産業や特許分類の変化などの一定の予備的分析を行う。この作業と並行して、当時のイノベーション活動および経済活動の一部を決定づけるようなイベント、政策についての調査を行う。また、特許制度の改正などイノベーション活動のインセンティブに影響するような制度変更についても引き続き調査を行う。
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