日本を含む東アジア諸国における、自由貿易協定(FTA)の利用額に関するデータを収集し、主に2つの課題について研究を行う。第一に、複数のFTAが利用可能な状況下における、企業の関税スキーム選択を理論的、実証的に分析する。第二に、国ペア別・製品別のFTA利用コストを計測する。そして、商品や国ごとの違いを利用して、FTA利用コストの詳細な構成要素を探り、企業のFTA利用を促進するうえで必要な政策を探る。 2019年度までに2本の論文が国際的学術査読誌に掲載されたが、2020年にはさらに3本の論文の掲載が決まった。FTAでの輸入増加が雇用に与える影響を分析した論文、6つのFTAが利用可能な環境における関税選択問題を実証的に分析した論文、グローバル・バリュー・チェーンとFTA利用の関係について分析した論文の3本である。これにより、計5本の論文の掲載が確定した。 その他、6本の論文を国際的学術査読誌に投稿し、査読を受けているところである。①2つの特恵関税制度が利用可能な際に片方の原産地規則が変化したときの効果を分析した論文、②関税率の変化が貿易価格や品質に与える影響を分析した論文、③関税率の変化が卸売企業のマージン率に与える影響を分析した論文、④FTAと関税減免制度の間の選択問題に関する論文、⑤6つの輸入国におけるFTA利用額データを用いたFTA利用率の決定要因を分析している論文、⑥あるFTAの貿易創出効果が非メンバー国からの輸入増加により縮小することを分析している論文の6つである。
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