研究班では、福井県全域をカバーするデータの利点を活かし、適切な自然実験を複数個、構成して、政策効果を分析する研究を進めた。典型的な分析では、処置群・対照群の2群の比較であるが、福井県内17市町の間の施策の差異をとらえることで、多数の自然実験の事例を構成することが可能となると同時に、自然実験として適切なものを選択することが可能になる。 今年度の研究対象は児童の医療費に対する助成制度であり、この制度が児童の医療利用に与える影響を検証した。2011年から2014年にかけて福井県下の医療費助成制度は、児童(小・中学生)について導入時期、給付内容やその他の制限が市町ごとに異なるため、その地域的・時間的な差異を自然実験環境とみなして、線形確率モデルによって制度の因果効果を推定した。制度適用者の入院外医療と調剤の一部の利用(医療費・受診率・診療実日数)は、非適用者のそれらに比べて有意に高かったがいずれも非弾力的であったという結果を得た。また、医療費助成とともに設けられている自己負担の存在は、入院外医療費を有意に減少させることが確認されたが、その需要も非弾力的であったという結果を得た。 また、介護サービス提供体制の効果分析について、要介護状態への影響についての分析を進め、前年度執筆途中の研究論文を改訂した。 なお、研究代表者が平成30年度より国立国会図書館に出向することになり、当研究課題を継続することができなくなった。このため、新規のデータ整備事業は中止し、今年度の研究は既存データの範囲での研究にとどめた。
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