研究課題/領域番号 |
17H02536
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
山重 慎二 一橋大学, 国際・公共政策大学院, 教授 (20282931)
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研究分担者 |
市原 麻衣子 一橋大学, 大学院法学研究科, 准教授 (80636944)
只野 雅人 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (90258278)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リスク / ネットワーク / デモクラシー / 持続可能性 |
研究実績の概要 |
社会の持続可能性を脅かす国内外の様々なリスクに対して、私たちはネットワークを形成し、事前・事後の対応を行っている。国家もまたリスクへの対応を行っているが、その政治体制が民主的か否かは、国内外のリスクへの対応やネットワークの形成や活動に影響を与え、社会の持続可能性に影響を与える。本研究は、リスク、ネットワーク、デモクラシーの相互関係を明らかにし、持続可能性を脅かすリスクへの適切な対応を可能にする政策・制度の提案を行うことを目的としている。 平成29年度は、初年度ということで、経済・公法・国際関係など異なる学問領域の参加者が相互理解を深める研究会を4回開催し、既存の研究について、そして新たな研究のアイディアについて学び合う機会を持った。さらに年度末には、中国の研究者5名とバングラディシュの研究者1名を招聘し、国際ワークショップを開催した。そこでは、自然災害リスクや環境リスクへの地域コミュニティによる対応と政府の関係性に関する各国の経験を共有し、リスクへの望ましい対応のあり方についての議論を重ねた。 このような研究会および国際ワークショップでの研究者の交流からは、まだ具体的な研究成果は生み出されていないが、そこでの意見交換や研究交流を通じて、参加者は大きな刺激を受けており、平成30年度以降の研究成果に結実していくことになるだろう。平成29年度に生み出された研究成果には、社会の持続可能性を脅かす様々なリスクやそれらへの対応に関する分析、家族、地域コミュニティ、政府などのネットワークによるリスクへの対応の分析、そして民主主義(デモクラシー)という政治体制のあり方に関する研究など、各研究者の本研究課題につながる研究の成果が見られる。その多くが英語での研究成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は、基礎研究に関わる研究会を中心に開催し、異なる学問領域の参加者が相互理解を深める機会を作るとともに、リスク、ネットワーク、デモクラシーという3つの要素を包括的に解明する研究を展開させるために、既存の研究についてお互いに学び合うという計画を立て、研究者のみならず実務家も参加する研究会を4回、6名の海外の研究者を招聘しての国際ワークショップを1回開催した。 平成29年度中に、リスク、ネットワーク、デモクラシーの相互関係に関する理論的仮説を構築し、作業仮説として提示することを計画していたが、平成29年度前半に行っていた過年度までの研究成果(英文図書)の取りまとめに、想定以上に時間を取られてしまい、理論的仮説の構築および提示にまでは至らなかった。その点で、進捗状況に若干の遅れがみられる。 しかし、そのような理論的仮説を生み出すためのインプットは、研究会および国際ワークショップでの意見交換そして海外の大学や研究機関での意見交換など平成29年度の研究活動の中で行ってきており、本年度(平成30年度)のできるだけ早い時期に、基礎研究の成果としての理論的仮説の構築・提示を行う計画である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度および平成31年度は、基礎研究の成果として提示される作業仮説を踏まえて、災害、経済、紛争という3つのリスクを中心とする応用研究を行い、その進捗や成果については研究会で共有していく。応用研究では、事例分析を重視し、国内外でのフィールド・ワークや国内外の研究者との意見交換・共同研究を行い、その研究成果を公表する。そして、基礎研究では、研究会や国際的なワークショップ等での応用研究の報告を通じて行われる仮説検証を踏まえて、仮説をさらに洗練させ、その研究成果を公表していく。 基礎研究の進捗に若干の遅れはあるが、上述のように、基礎研究と応用研究は、お互いに刺激し合いながら、それぞれ研究を深めていくという研究計画を当初より持っていたため、研究計画の大きな変更は必要ない。平成30年度も年間10回ほどの研究会を開催し、年度末には国際ワークショップを開催する予定である。 平成29年度の国際的な研究活動を通じて、リスク、ネットワーク、デモクラシーの相互依存関係に関しては、海外の研究者の関心も高く、世界で起こっている様々な問題を解明するために有用であることを確認できた。平成30年度も、海外の研究者との意見交換や議論を積極的に行い、世界的な視野を持って本研究課題に取り組んでいく。
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