研究実績の概要 |
研究代表者の黒澤は,年度の前半,海外研究協力者のB.ウプス,N.フォーブスとともに,共編者として,本科研の内容を主題とする専門学術書,International Business and Organizational Innovation: From Total War to Cold War(Routledge社, 国際経営史研究シリーズ)の編集作業を進め,また本研究の目的・方法と既存研究のレビューを内容とする19ページのIntroductionを執筆し同署に収録,2019年3月刊行した。同署の構成は,0) Kurosawa, Forbes & Wubs, 1. Kurosawa & Wubs, 2)Izawa, 3) Spoerer, 4) Kikkawa, 5) Segreto, 6) Forbes, 7) Stokes, 8).Klement, 9) Boon, 10) Buchelliの10章である。上記の3名は,Lopes et al., The Routledge Companion to the Makers of Global Business(Routledge, 2019)収録論文の作成ではナショナリズムを中心に研究動向整理をおこなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度の目標は,全体としては,租税リスク研究の共有,ORAの申請(公募がある場合),WEHC(Boston)でのパネル報告と現地での編集会議,WEHC租税パネル報告から選抜しての英文査読誌特集企画であった。ORAについては公募がなく見送ったが,WEHCでは予定どおりパネル・セッションを実施した。他方,当初2017年の目標としつつも寄稿者のC.Kobrakの死去等で遅れていたRoutledge社刊行の専門書については,年度末に刊行を実現した。WEHC (Boston) 報告論文を特集号にまとめる計画は制約が大きく断念せざるえず,その点では進捗に遅れが出ているが,他方で,国際的な権威のあるOxford EncyclopediaでのPolitical Riskの項目をForbes, Wubsらと担当することになり,その点では予定外の進展もあった。概ね順調に進展しているといえる。代表者の黒澤は,19世紀から今日までを視野に,政治リスク・ナショナリズムと多国籍企業の関係に関する世界の重要な研究を整理した研究史レヴュー論文,”Political Risk and Nationalism”をNeil Forbes, Ben Wubsらと執筆し,大型出版企画,Teresa da Silva Lopes, Christina Lubinski and Heidi J.S. Tworek (eds.) The Routledge Companion to the Makers of Global Businessに寄稿した。当初予定より半年の遅れであるが,地球規模での研究把握では予想外の進展もあり,概ね順調といえる。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度は,8月にロッテルダムで開催されるEBHA年次大会で海外研究協力者との打ち合わせを行ったうえで,10月開催の経営史学会全国大会でパネル・セッションを組織し,内外の研究成果の突き合わせを行う。研究全体の枠組みに関しては,Oxford EncyclopediaでのPolitical Risk項目原稿の作成とともに再検討を進める。その成果は,Neil Forbes(Coventry University), Ben Wubs(Erasmus University Rotterdam)との共同研究・共著論文として公表する。 税制に関しては,連携研究者の井澤龍を中心に研究を進める。Forbes, WubsらがWEHC (Boston)パネルを基盤に進める次の英文書/特集号企画の一部となる。 分担者のドンゼは,The advantage to be Swiss: Nestle and political risk in Asia during the early Cold War (1945-1970)を完成させ有力査読誌に投稿する。学会報告は,EBHAでの個別報告および経営史学会での上記のパネル報告を予定している。橘川は石油関連企業に関する事例研究を深める。 研究計画で構想したような形で新しい研究潮流をつくる上で重要なのは,より広く,日本やアジアの経営史研究との横の連携をつくることであるが,これについては,秋の経営史全国大会のパネル(日本語報告),および,中国の桂林で予定される第二回中国企業史ワークシッョプでの報告で実現を図る。
|