研究課題/領域番号 |
17H02560
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
忽那 憲治 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 教授 (00275273)
|
研究分担者 |
山本 一彦 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 教授 (00789448)
沈 政郁 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (70706499)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 経営学 / 家族企業 / ファミリービジネス / エグジット戦略 / 事業戦略 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、家族企業(ファミリービジネス)の戦略行動と長期パフォーマンスの関係性を明らかにすることである。近年、世界的にみてもファミリービジネスが上場企業を代表する組織形態であること、また平均的にファミリービジネスの業績が高いことが明らかになってきているが、なぜ業績が高いかは明らかにされていない部分が多い。このような問題意識に基づき、2017年5月から7月にかけて、創業から3代目以降にあたるわが国のファミリービジネス経営者7名(藤井酒造株式会社の藤井義大、株式会社スマートバリューの渋谷順、平安伸銅工業株式会社の竹内香予子と竹内一紘、株式会社セイバンの泉貴章、株式会社ファミリアの岡崎忠彦、株式会社友安製作所の友安啓則、木村石鹸工業株式会社の木村祥一郎)を対象にインタビュー調査を実施した。また、海外のファミリービジネスについては、イギリスを代表する優良ファミリービジネスであるペントランド社について、2018年2月12日にアンディ・ルービン氏(ペントランド・ブランズ・リミテッド会長)へのインタビュー調査を実施した。 こうした国内外のファミリービジネスのケース分析と平行して、研究論文を執筆するための準備を進めてきた。まず、ファミリービジネスに関する先行研究の包括的レビューを実施し、リサーチデザインの検討を行った。分析に必要となるデータ整備については、これまで構築してきた1997年から2015年までのIPO企業のデータセットに加えて、株式会社日本経済研究所の企業財務データバンクと、日経メディアマーケティング株式会社の日経NEEDS日経企業活動情報を購入し、データの統合作業を行った。それらのデータを用いて記述的な分析結果のとりまとめを行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ファミリービジネスの国内企業7社のインタビュー調査の結果については、各社の内容を原稿にまとめ、「ファミリービジネスのベンチャー型事業承継」というテーマで書籍として発表する準備を進めている。ヨーロッパには長期持続的な成長を遂げてきた優良ファミリービジネスが極めて多く、独特の企業統治と家族統治の仕組みを構築している。ヨーロッパを代表する優良ファミリービジネスであるペントランド社もその1つである。ペントランド社は株式公開(IPO)とその後に株式非公開化を実施したことでも興味深い企業である。同社に関する詳細な文献分析及びファミリートップへのインタビュー結果を基にして、企業統治と家族統治の実態を考察し、ケース論文としてとりまとめ国内雑誌で発表する準備を進めている。 こうしたケース分析と、構築した包括的なデータセットに基づくデータ分析を通じたファミリービジネスの実態把握を基礎にして、学術研究として深める意義のあるリサーチクエスチョンの再設計を実施する。現時点では少なくともトップレベルの国際ジャーナルに投稿可能な5つ程度の研究テーマの設定が可能と考えている。実施してきたデータ整備と分析枠組みの議論を経て、これら5つのリサーチクエスチョンの中からまずは優先的に取り組むべき研究テーマを選択し、ワーキングペーパーの作成に向けての研究の蓄積を行う。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度には、忽那はファミリービジネスのケース分析のためのインタビュー調査を国内企業7社について実施した。また、忽那と山本は海外のファミリービジネス1社(イギリスのペントランド社)についてインタビュー調査を実施した。平成30年度においては、忽那はファミリービジネスの国内企業7社のインタビュー調査の結果を原稿にまとめ、「ファミリービジネスのベンチャー型事業承継」というテーマで書籍としてとりまとめる。ペントランド社の分析結果については、忽那と山本がケース論文としてとりまとめ国内雑誌で発表する。 こうしたケース分析と平行して、平成29年度は、研究論文を執筆するための準備を沈と忽那で進めてきた。ファミリービジネスに関する先行研究の包括的レビューを忽那と沈が分担して実施し、リサーチデザインの検討を行った。そこでの議論を踏まえて分析に必要となるデータ整備を包括的に実施し、それらのデータを用いて記述的な分析結果のとりまとめを行うとともに、メンバー間での分析枠組みの共有を図った。 平成30年度は、平成29年度に実施した記述的データ分析とケース分析を通じたファミリービジネスの実態把握を基礎にして、学術研究として深める意義のあるリサーチクエスチョンの再設計を実施する。現時点では少なくともトップレベルの国際ジャーナルに投稿可能な5つ程度の研究テーマの設定が可能と考えている。平成30年度には、平成29年度に実施してきたデータ整備と分析枠組みの議論を経て、これら5つのリサーチクエスチョンの中からまずは優先的に取り組むべき研究テーマを選択し、ワーキングペーパーの作成に向けての研究の蓄積を行う。平成31年度には、作成したワーキングペーパーを海外の学会やカンファレンスで報告し、海外ジャーナルへの採択を目指す。
|