研究課題/領域番号 |
17H02562
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研究機関 | 産業技術大学院大学 |
研究代表者 |
吉田 敏 産業技術大学院大学, 産業技術研究科, 教授 (00451881)
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研究分担者 |
宋 元旭 東洋大学, 経営学部, 助教 (20780422)
成田 雅彦 産業技術大学院大学, 産業技術研究科, 教授 (30513717)
海老澤 伸樹 産業技術大学院大学, 産業技術研究科, 教授 (40795910)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リーンスタートアップ / 発生機能 / 創造プロセス / 設計機能 / フィードバック |
研究実績の概要 |
本研究の対象であるリーンスタートアップ製品開発は、暫定的な製品を使い手に供給し、そこからフィードバックされる情報によって、価値をつくる確度の高い製品を開発する考え方である。そのため、当初案の設計のプロセス、当初案の使われ方のプロセス、改善案の概念設計へのフィードバック、という3段階の流れを精査しながら、重要な点を明示化しなければならないと考えている。特に、本研究は、フィードバックにおける根本的な考え方を再考し、これまでになかった体系的な整理を行うことを第一の課題であると考えている。そのために、以下の3点を重要な課題と位置づけ、研究を進めていくものである。 ・製品分野ごとに、つくり手による「設計機能」と、使い手による「発生機能」を論理的仮説に基づいて類型化し、類型ごとに対象を抽出する。 ・「設計機能」をつくり手への調査により「発生機能」を使い手への調査により、具体的に記述していく。この時、影響要因、複雑性、不確実性についての理論体系を確立していく。 ・理論体系に基づき、具体的な国内のリーンスタートアップ製品開発の影響要因を整理しながら機能面に関する理論的フレームを考察し、具体的な手法の確立への貢献を目指す。 具体的な今年度の実績としては、査読論文2本、国際学会発表1本などにまとめている。また、現在も研究成果をまとめつつある論文が2本、国際学会発表予定論文が1本あり、引き続き成果を発表していくものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の対象であるリーンスタートアップ製品開発は、暫定的な製品を使い手に供給し、そこからフィードバックされる情報によって、価値をつくる確度の高い製品を開発する考え方である。そのため、当初案の設計のプロセス、当初案の使われ方のプロセス、改善案の概念設計へのフィードバック、という3段階の流れを精査しながら、重要な点を明示化しなければならない。また、研究計画の概要としては、「具体的な対象の抽出」、「設計機能と発生機能の記述」、「改善設計へのフィードバックの理論的フレームの構築」が要点であると考えてきた。 ここまで、議論が大変に深まり、当初に予想していなかった堅強な理論的なフレームワークが構成されつつある。これは、一般的な製品やサービスが、どのようなプロセスで、考案され、設計され、生産され、使われていくのか、という一連の流れを全て含むものとなっている。このフレームワークは、経営学や社会学ですでに議論されてきたものに加え、工学的な観点からつくり手の視点を厚めに反映したものであり、極めて有用性の高いものであると考えている。この成果は、当初の予定より、充実した成果となりつつあると言える。 一方、使い手の取りだす機能の把握については、調査や分析を行いつつも、単純化することが出来ず、体系化が進み難いことが認識された。そのため、製品領域や産業領域の領域特性を体系化していくことにより、当初と異なるレイヤーをターゲットとすることを検討している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
ここまでの研究で明確になってきた、製品やサービスの創造プロセスに関する俯瞰的な体系化を基盤とし、その上に各製品分野や産業分野の事例を重ね合わせていくことを進め始めている。 現段階では、自動車、建築、空調機械製品、衛生陶器製品、建具製品、印刷産業の組織に協力を求めてきたが、家具製品、電気製品を加え、より一般化させた内容を目指して調査・分析を進めていく。この時、当初の目的に沿い、つくり手と使い手が関与することによって生じる2種類の機能について徹底的に議論していくものである。また、このような一般的な製品やサービスに加え、製薬領域、医療領域なども対象としていくことを検討しており、すでに医師との議論を始めている。 理論展開や、調査の分析に関する考察については、国内の研究者、および海外の研究者に協力を求め、様々な偏りの要因を排除していくものである。 最終的には、製品やサービスに関する創造プロセスを出来るだけ一般化しながら、できるだけ正確に記述し、現行製品から次世代製品設計へのフィードバックを中心に、多くの経済的活動に有用な考え方を示すことを目指しているものである。
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