研究課題/領域番号 |
17H02564
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
鄭 有希 学習院大学, 国際社会科学部, 教授 (00468828)
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研究分担者 |
竹内 規彦 早稲田大学, 商学学術院(経営管理研究科), 教授 (40387569)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | シニア人材 / 革新的行動 / 日本企業 |
研究実績の概要 |
本研究では、人材の高齢化という深刻な課題に直面している超高齢社会である日本企業における従業員の加齢と革新的行動との関係、及び加齢とともに革新的行動が維持・促進されるための条件要因を理論的・実証的に検討することを目的とする。本研究の目的を達成するために、2017年度から研究代表者、研究分担者、そして研究協力者との役割分担と相互協力をもとに研究活動を行っている。先ず、2017年では、日本企業の文脈における中高年人材に求められる革新的行動の概念の精緻化及び測定可能な尺度開発を中心に研究活動を行った。初年度の研究内容に基づき、2018年から、人材の加齢と革新的行動との関係を明らかにすることを目的とし、時系列調査を開始し、続けて行っている。さらに2019年では、中高年人材の革新的行動を維持・促進する諸条件要因の特定化のために、調査票の修正と改善を行い、調査を続けている。具体的に以下の研究活動を行った。 (1)文献収集とレビュー:前年度に引き続き、組織行動論、人的資源管理論、イノベーション論の分野を中心に、文献レビュー及び実証研究報告に関するメタ分析を伴う文献レビューを行った。 (2)定性調査:前年度に引き続き、日本企業の文脈における中高年人材の革新的行動を理解するために、政府機関及び企業の発行資料(労働・雇用に関する法案や統計資料)、新聞や雑誌記事等の資料収集とその分析を継続的に行った。 (3)定量調査の実施とデータ分析:長期にわたり一定のサンプル数を確保するために、時系列的に追跡調査を得意とする調査専門会社を通して、アンケート調査を実施した。実施段階で時系列に蓄積されるデータを用いて随時分析を行い、結果報告を定期的に行った。 (4)論文化と成果発表:成果の一部は、国内・海外の学会で報告されたとともに、海外ジャーナルに投稿するために、英語で論文化を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の研究活動は、研究計画通り、特に遅滞することなく実施することができたため、おおむね順調に進展していると評価できる。具体的には、①文献収集とレビュー、②定性調査、③定量調査、④データ分析、及び⑤成果の一部の論文化と成果発表のそれぞれである。研究代表者、分担者、協力者からなる研究チーム内での積極的な研究貢献があったこと、またチーム内での円滑なコミュニケーションがとれていたことが主な理由として挙げられる。他には、研究代表者・分担者それぞれの研究機関において、電子ジャーナルやデータベースなどが充実していたこともあり、それらのアクセスがタイムリーにできたことも貢献している。また、研究計画自体も実施可能な計画が立てられていたことも大きい。 但し、本研究の主な貢献である「日本企業の文脈における中高年人材の革新的行動」概念に精密化に対して、海外の研究者らから、本研究では調査対象が大企業に絞られたため、日本における中小企業には適応できないという指摘を受けた。この点を補うために、研究代表者、研究分担者、国内研究協力者の人的ネットワークを利用し、一部の中小企業を対象にインタビュー調査の実施を計画している。
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今後の研究の推進方策 |
本科学研究費補助事業の最終年にあたる本年度は、研究成果を国内だけではなく世界に発信することを目指す。具体的な研究計画は下記の通りである。 ①文献・資料の収集と分析:引き続き、文献・資料の収集を、特に加齢と革新的行動の関係を条件づける諸要因に焦点を合わせた資料・文献のレビューを行う。 ②縦断的調査データの解析:加齢と革新的行動の間に介在する条件要因(Moderators)を精緻に分析する。 ③成果の報告:国内の学術誌(日本経営学会誌、日本労務学会誌、組織科学など)・海外の学術誌(Personnel Psychology, Human Resource Managementなど)に投稿の準備を進める。また、イギリスのマンチェスターで開催予定のBritish Academy of Managementの国際学術会議(virtual conference)に本研究の一部が発表される予定である(査読審査により競争的口頭発表が決まっている)。
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