研究実績の概要 |
初年度は,まず4月29日に京都大学でキックオフ研究会を開催し,メンバーの役割分担(①研究目的の欄で示したのれん関する文献サーベイ:宮宇地及び山下,②日本基準,米国基準,及び国際会計基準におけるのれんの会計基準設定趣旨を設定当時における論争にまで遡って考察:徳賀・米山。③のれんの規則的償却 vs. 減損についての理論的先行研究の検討:徳賀・勝尾と,実証研究の整理・深堀り:宮宇地・山下)を決め,秋まで各人がそれぞれの担当作業を行った。今年度の研究会は,2回目:10月14日~15日(京都)(報告者:小賀坂ASBJ副委員長,宮宇地,及び山下),3回目:11月19日(東京)(報告者:Clemence Garcia氏),4回目:1月31日(京都)(報告者:山下),5回目:3月21~22日(那覇)(報告者:徳賀,宮宇地,山下,米山,及び勝尾)であり,上記の分担した研究について報告・討論を行った。 研究発表に詳細を示しているように,①科研メンバーによる,科研テーマに関する外部報告は7件(うち5件は海外での学会報告)。論文の公表は,英語論文1点,日本語論文2点である。著書は,1冊であるが,所収されている論文は2本である。 また,のれんの会計処理を巡る国際的な論争において,のれんの規則的償却を強く否定しているフランスで,2017年11月30日~12月1日に,会計基準設定主体の委員長,公認会計士協会の理事長,代表的な企業,及び制度への影響力のある会計学者に対して訪問面接調査(エリート面接)を行った(徳賀・米山・勝尾)。現在,これらの調査結果を,フランスの先行研究と付き合わせる作業を行っている。また,3月10日に,東京大学における会計ワークショップにて,「フランスにおけるのれんの会計処理-聞き取り調査をふまえて-」と題し報告を行った(米山,勝尾)。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に整理した「償却 vs. 減損論争」の構造(何と何がどのような点で本質的に対立しているのか)と多面的な実証研究のサーベイによって把握された経験的な証拠とを突き合わせて,論争を解決困難にしている原因を明確化する。 ①追加的実証研究:日本においてのれんの規則的償却が支持される理由の調査。 ②規則的償却と非償却・減損との優劣を複数の目標仮説の下で比較検討する。 そして,フランスにおける調査結果よりASAFのような国際的な会議の場で国としての意見が表明されるが,当該国内で意見が統一されている訳ではないという事実に示唆を得て,さらに,日本で規則的償却を支持する企業が圧倒的に多いと考えてられているが,事実はどうなのか,規則的償却を支持する理由は何か,について再調査すべきと考えて,経団連加盟東証上場企業(約1300社)と非加盟東証(一部)上場企業(約700社)に質問票調査を行うことにした(当初の予定に追加)。現在,調査票の作成を進めている。また,それらの企業の一部に対しては訪問面接調査も行う。必要であれば証券アナリスト協会において,質問票調査及び/または面接調査も行う予定である。
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