研究課題/領域番号 |
17H02589
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
平井 晶子 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (30464259)
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研究分担者 |
中島 満大 県立広島大学, 経営情報学部, 准教授 (70774438)
廣嶋 清志 島根大学, 法文学部, 教授 (20284010)
高橋 眞一 新潟産業大学, 経済学部, 教授 (80030683)
小池 司朗 国立社会保障・人口問題研究所, 人口構造研究部, 第2室長 (80415827)
山根 真理 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (20242894)
李 キョンウォン 岡山大学, 教育学研究科, 教授 (90263425)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 社会学 / 人口学 |
研究実績の概要 |
本研究では,近代をこえた視野から現代をみる「300年から読み解く日本の家族/人口論」の構築を目指している。平成29年度は,その目標達成に向けて,各時代と地域に根ざした実証的な研究の蓄積と,それを包括するための家族/人口に関する理論的フレームワークの提示に向けた予備的研究を実施した。 まず徳川期から明治期においては以下の知見を得ることができた。(1)西南村落を対象とした歴史人口学的研究から,これまでに発見されていた近代移行期に生じた結婚や離婚の変容に加えて,再婚といった実践にも変化がみられることが明らかになった。(2)徳川末期と明治期初期の宗門人別改帳を用い,武蔵国多摩郡や飛騨,備中などを対象とした近代移行期における各地域の人口構成が提示された。(3)明治期の地域人口(松江市)に関する資料批判を行った。その議論から明治期の人口変動を正確に記述していくための手段を検討した。 次に戦後から現代については,(1)愛知県を対象として,人口動態変化の時空間分析を行った。愛知県は,後述するように,本研究の事例分析の拠点となる地域でもあるため,標準化出生比などの指数を算出し,その結果を地図化した。(2)愛知県刈谷市を対象とした子育て期の家族や親族関係,ならびに支援ネットワークに関する調査の再分析を行った。先の愛知県の時空間分析と重ね合わせることでより立体的に事例を考察することができた。(3)戦後の人口移動と直系家族制規範との関係についての実証的・理論的研究が報告され,本研究における近代から現代にかけての理論的フレームワークの予備的な構築を行った。 上記の研究成果を共有し,発展させるために,平成29年度は二度の研究会を開催した。各時代と地域を結ぶことの課題が明確になり,またそれぞれを結いあわせる理論的枠組みについても検討が進んだと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は,まず徳川期から明治期にかけて,宗門人別改帳を用いた歴史人口学的研究が二つの水準から進められた。ひとつは,村落を対象とし,そこで暮らす人々のライフコースを抽出する研究が東北村落,西南村落において実施された。もうひとつは,複数の村落からなる地域社会の人口構成などを,備前や多摩といった複数の地域で算出することができた。このように徳川期から明治期においては,ミクロとマクロの水準の歴史人口学的研究が着実に積み重ねられている。 続いて戦後から現代を対象とした人口学,ならびに家族社会学的研究も順調に蓄積されている。人口学的分析では,事例分析の対象となる地域の人口構造ならびに変動を地図化し,事例との接続性を高めることができた。加えて現代社会を対象としたサーヴェイ・リサーチやインタビュー・データの再分析を行い,今後の調査計画の立案を平成29年度は行った。
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今後の研究の推進方策 |
全体としての研究の方策としては,各時代における知見を結合することを意識して研究を推進していくということになる。具体的には,各時代に関するミクロ/メゾ/マクロの水準において,時系列的な分析を積極的に進めていく予定である。それによって,それぞれの時代をリンクさせると同時に,時間を軸として各水準をも結合させていきたい。 次に現代社会の事例を分析する際に,これまでインタビューを中心とした調査計画を立案してきたが,平成30年度より,フィールドワークの専門家に参加してもらうことにより,地域社会の子育てやそのネットワークについて,複合的な視点から考察していく予定である。 加えて,実証的な研究によって得られた知見を結び合わせるための理論的枠組みを提示するために,理論研究にも注力していく。理論を専門とする研究分担者を迎え,より精緻に理論的整合性を保持しつつ,300年という超長期的視点の枠組みの構築を目指していく。これまで個別の研究では,興味深い成果が現れている。それらの知見を土台とした家族/人口論を析出するための理論やフレームワークの精査を平成30年度以降に実施していく予定である。
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備考 |
・書評 平井晶子,2017「Drixler, Fabian, 2013, Mabiki, 1660-1950, University of California Press」, 『日本研究』 56,222-225. ・書評 廣嶋清志,中島満大著『近世西南海村の家族と地域性』『人口学研究』53,2017,88-90.
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