研究課題/領域番号 |
17H02591
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研究機関 | 大谷大学 |
研究代表者 |
西村 雄郎 大谷大学, 社会学部, 教授 (50164588)
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研究分担者 |
松宮 朝 愛知県立大学, 教育福祉学部, 准教授 (10322778)
高野 和良 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (20275431)
河野 健男 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (40144901)
佐藤 洋子 高知大学, 教育研究部総合科学系地域協働教育学部門, 助教 (60627561)
小内 純子 札幌学院大学, 法学部, 教授 (80202000)
藤井 和佐 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (90324954)
相川 陽一 長野大学, 環境ツーリズム学部, 准教授 (90712133)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 地域イデア / 十勝・帯広地域生活文化圏 / 大崎地域生活文化圏 / 綾部地域生活文化圏 / 日田地域生活文化圏 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、地方の社会解体的危機が進む中で、政府が「選択と集中」、「集約とネットワーク」を掲げ、「市町村合併」や「定住自立圏構想」を通して地方再編を強力に推進していることに対抗し、地域固有の生活原理である<地域イデア>を基底におき、地域住民が自律的、内発的に形成しているサスティナブルな<地域生活文化圏>の特質を解明し、これを通して「新たな日本社会のあり方」を構想することにある。このため本研究では、2016 年度まで科学研究費を受けた「地方の社会解体的危機に抗する<地域生活文化圏>形成の可能性」の研究成果を起点に、その分析を深化させることで、調査対象圏域の<地域生活文化圏>形成とその展開を明らかにしてきた。 本年度はこれをふまえ1)十勝・帯広地域生活文化圏、2)大崎地域生活文化圏、3)綾部地域生活文化圏、4)日田地域生活文化圏における調査研究を継続するとともに、新たな比較対照事例として①岩手県北上市の西部開発農産を中心とする大規模法人経営、②宮城県加美町における農協を中心とする集落経営、③福井県鯖江市における稲作兼業と眼鏡産業を中心とした地域づくり、④大分県中津市における下郷農協による地域づくりについての聞き取り調査を行った。 なお、本年度の研究成果については岩崎信彦、藤井和佐、小内純子が2019年5月11日開催の地域社会学会大会で「危機に抗する地方社会-宮城県大崎市の場合」という共通題目で報告を行う。 これまでの研究を通して明らかになってきたことは、各地域が固有の歴史を積み重ねる中で、今日的な地域構造と地域イデアを形成し、その構造にみあった地域づくりを展開してきているという事実であり、2019年度はこれらの調査結果に比較社会学的検討を加え、研究課題である「地方の社会解体的危機に抗する<地域生活文化圏>の形成と展開」の特質を明らかにしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は地域固有の生活原理である<地域イデア>を基底におき、地域住民が自律的、内発的に形成しているサスティナブルな<地域生活文化圏>の特質を解明し、これを通して「新たな日本社会のあり方」を構想することにある。 このため本研究では、2016 年度まで科学研究費を受けた「地方の社会解体的危機に抗する<地域生活文化圏>形成の可能性」の研究成果を起点に、1)十勝・帯広地域生活文化圏、2)大崎地域生活文化圏、3)綾部地域生活文化圏、4)日田地域生活文化圏における調査研究を深化させてきた。この中で、1)では、音更町および帯広市大正地区における明治期からの集落形成に関する調査研究、2)では古川地域におけるまちづくり委員会、鳴子・岩出山における協業体の営農に関する聞き取り調査、3)では綾部市の地域づくりに関する補充調査、4)では日田市山間地域における林業経営に関する聞き取り調査と日田市自治会長を対象とする質問紙調査、を本年度は新たに行った。 さらに、これらの地域の比較対照地域として、2)については岩手県北上市における兼業農家の委託による大規模法人経営の展開、宮城県加美町における農協を中心とする集落経営、3)では綾部市の比較対照地域である鯖江市の地域形成に関する聞き取り調査、4)では中津市下郷農協の経営に関する聞き取り調査、を行った。 これらを通して、我々は調査対象としてた各地域が固有の歴史を積み重ねる中で、今日的な地域構造と<地域イデア>を形成し、それにみあった地域づくりを展開することで、地域住民が自律的、内発的にサスティナブルな<地域生活文化圏>形成をはかってきていることを明らかにした。 本研究は、これまでの研究成果に比較社会学的考察を加えることで「新たな日本のあり方」を構想することを最終目的としており、これまでの研究活動はその条件を満たしていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、<地域イデア>を基底におき、地域住民が自律的、内発的な地域形成を行っている1)十勝・帯広、2)大崎、3)綾部、4)日田の四地域をサスティナブルな<地域生活文化圏>と捉え、その特質を明らかにするとともに、その成果に比較社会学的考察を加えることで「新たな日本社会のあり方」を構想することを目的としている。 これまで本研究では、第一に各圏域の歴史的形成過程及びそこに現れた<地域生活文化圏>の特質を、「地域自治」、「地域産業」、「地域文化」の三局面に着目し、各圏域固有の自然条件のなかで、これらが連関していかなる<地域イデア>が形成され、いかなる<地域生活文化圏>が形成されてきたかを明らかしてきた。第二に、この<地域イデア>を基層として、その上に形成された<地域生活文化圏>の現状分析をおこなってきた。ここでは、外部社会との係わりの中で、「住民」、「地域自治体」、「企業・協業体・協同組合」、「地域協働活動体」の4セクターが協働して、「地域課題」の解決を図り、新たな<地域イデア>を生成させてきたプロセスを明らかにし、そこに現れた各<地域生活文化圏>の特質を明らかにしようと研究の深化をはかっている。この上で、第三に、これらの成果に比較社会学的考察を加えることで「新たな日本社会のあり方」を構想したいと考えているが、この点については十分な考察が行われていない。 研究最終年度となる本年は、これまで培ってきた4調査対象地域の研究成果をまとめ、日本社会学会、地域社会学会、村落社会学会などで報告を行いながら、各地域が社会解体的危機に抗する形で形成、展開させてきた<地域生活文化圏>の特質を明らかにするとともに、その成果に比較社会学的考察を加えることで「新たな日本社会のあり方」を構想していきたい。
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