研究課題/領域番号 |
17H02597
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
片岡 栄美 駒澤大学, 文学部, 教授 (00177388)
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研究分担者 |
村井 重樹 島根県立大学, 総合政策学部, 講師 (00780230)
川崎 賢一 駒澤大学, グローバル・メディア・スタディーズ学部, 教授 (20142193)
廣瀬 毅士 駒澤大学, 付置研究所, 研究員 (20571235)
磯 直樹 慶應義塾大学, 法学部(三田), 特別研究員(PD) (90712315) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ディスタンクシオン / 文化資本 / ハビトゥス / 文化的オムニボア / 文化の階層性 / ブルデュー / 文化実践 / 趣味 |
研究実績の概要 |
日本版の文化の差異化・卓越化(ディスタンクシオン)研究を計画に沿って推進し、平成29年度は以下の成果をえた。(1)次年度予定の本調査の予備調査として大学生調査を実施した。有効サンプルは383票で、首都圏4校と地方大学1校で実施した。音楽、ファッション、スポーツ、メディア、価値観等の各領域で分析した結果、若者の文化実践やテイストの測定方法や仮説設定に関しての知見が得られた。(2)文化実践を方向づけるハビトゥスの複数性・多次元性に関する研究を推進するため、デプス・インタビュー調査を10名に実施した。対象者が大学生の場合と社会人の場合でのインタビューの工夫を行い、実践の多様性とハビトゥスの一貫性および分化について一定の予備的知見が得られた。(3)片岡は過去に実施した調査データの再分析を行い、文化的オムニボアを理論的・実証的に再考する研究を行った。文化実践の多重対応分析(MCA)を行い、文化の差異化が生じやすい文化実践と社会的地位変数との関係性を明らかにした。文化テイストは性と年齢で大きく分化するとともに、学歴や所得の地位変数のほか、子ども時代の文化資本(家庭環境)とも強く関連する。また(4)文化実践を始めるきっかけを「文脈」概念を用いて分析し、文脈効果の時代的変容を明らかにした。これらは日本社会学会で研究発表し、また論文として活字化した。(5)グローバル化による文化の変容と文化政策の関連について、シンガポールを題材に川崎が検討し論文を発表した。(6)ヨーロッパを中心に新しい研究動向・情報を入手し、複数の海外研究者との協力関係を開始した。(7)村井と片岡は食に関する海外研究書の翻訳作業を行った。(8)新しい研究メンバーが3名(連携協力者)加わり研究組織を充実させ、分析方法や研究方法についての検討や学習会を行うことで、次年度の研究計画推進にむけての具体的な準備を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は文化に関する調査研究計画の1年目であり、平成29年度は文化理論の検討や海外研究者との関係性を強めることを主な目的としていた。それらは概ね達成でき、新しい研究動向と幅広い知見を得ることができた。またそれだけでなく、当初、計画としては予定していなかった大学生を対象とした質問紙調査を行うことができた。これは、平成30年度に予定している全国調査の予備調査として、若者の文化実践やテイストについて一定の成果をえることができた。とくに質問文の検討には時間がかかるため、本年度に予備調査として若者の文化実践の様相をある程度把握できたことで、研究計画を次年度以降、スムーズに進展させることが可能となった。また質的調査としては、次年度に予定していたデプス・インタビューを開始することができ、現代の文化実践の特徴や調査で明らかにすべき課題をより深く知ることができた。今年度に実施できた予備的調査から予想よりも多くの知見が得られ、量的・質的の両方で研究内容の意義と今後の研究の方向性について、具体的に進展させることができた。1年目の研究成果を学会報告や論文として公開できたことも、その理由の1つである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、ブルデュー社会学を基礎としつつも、新しい文化資本論と多次元ハビトゥス論、社会構成意識の観点から、日本版の『新ディスタンクシオン』調査研究を共同して行う。今後は、昨年度の研究成果を踏まえて、以下の8点を中心として計画を実行する。 (1)複数の文化的界(音楽、美術、食、読書、スポーツ等)における文化の具体的な調査項目を量的調査と質的調査によって検討する。 平成30年度の秋に、文化に関する全国調査(郵送法)を実施する。無作為標本で約4000名(男女)を抽出し、質問紙調査を実施する。(2)さらに回答者のうち協力してもらえる対象者には、インタビュー調査を実施する予定である。(3)海外研究者との連携を強めるために、海外の文化研究者を招き、駒澤大学にてワークショップを開催する。(4)海外の研究動向について詳細な研究レビューを行う。(5)海外研究者とのネットワークを強めるために、海外の複数の拠点を訪問する。(6)昨年度に行った大学生予備調査から、調査項目を精選し、全国規模での大学生文化調査を実施する(7月~9月実施)。サンプルの代表性が得られるようサンプリングを行い、大学生の文化実践、テイスト、メディア利用等の関連性を再度、新たな調査票によって分析し検討する。これにより若者の文化実践の実態を把握し、全国調査(量的質問紙調査)の予備調査としても利用し、新しい文化資本について考察する。(7)複数回の研究会を駒澤大学で開催し、調査の準備、調査の推進・実査、データクリーニング、インタビュー調査の文字起こし、量的データの分析を行い、検討会を行う。(8)データが整ったら、文化実践のマッピングをはじめとして、文化実践の階層性や社会構成意識との関連についての分析を開始する。
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