研究実績の概要 |
本研究は、虐待予防および悪化防止機序の解明を目的とした。 全国の0歳~6歳児と保護者を対象に、毎年3,000組ずつ平成11~30年の20年間パネルコホート研究を継続したデータ(約60,000組)の卒園児に対する郵送追跡調査を実施した。併行して支援効果検証のための在園児3,000名に対する質問紙調査と訪問面接調査を実施し、「不適切な養育環境」の特性別の発達軌跡と影響要因、支援効果に関する科学的な根拠を提示した。養育環境、サポート環境、子どもの発達状態、健康状態、社会適応、問題行動などの評価は、欧米で開発され日本で標準化された評価指標を活用し、海外既存研究と比較検討が可能な客観的な評価手法を用いた。 科学的な根拠に基づく「虐待予防および悪化防止支援モデル」の開発として、1)海外コホート研究の成果に基づく「虐待予防および悪化防止支援モデル」の開発過程、内容、評価に関する系統的レビュー、2) 青年期におよぶ大規模コホートデータの分析結果、3) 保護者と子育て支援専門職のフォーカス・グループインタビューにより得られた情報、4)申請者らが開発済みの「養育環境評価指標」、5)支援モデル実施によるプロセス評価、6)支援モデル実施のアウトカム評価を総合的に分析し、統計的妥当性及び臨床的重要性を加味しながら、有効な項目を抽出して体系化し、「虐待予防および悪化防止支援モデル」を開発した。 さらに、実践の場において「虐待予防および悪化防止支援モデル」を十分に活用するために、具体的な実践につながるさまざまな形の活用方法を提示した。不適切な養育環境の特性別に、子ども、保護者、専門職、子どもの友人、近隣地域などに向けて、実際に支援を活用する際の目的、方法、進め方のコツ、把握する必要のあるポイント、予測される成果などを詳細に解説したホームページを作成し広く利用可能とした。
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