研究課題
本研究は、(1)一般高齢者、要支援・要介護認定者、介護者に対する反復横断調査と追跡調査データを基に介護保険制度改革の影響を評価すること、(2)困難な状況にある事例に対する質的調査を基に社会的排除を防止する支援策を検討することである。今年度は、目的(1)については要支援・要介護認定者と介護者の追跡調査を行い、変化とその要因を分析し、目的(2)については当時者や支援者に対する半構造化面接を行い、問題の把握と支援のあり方を検討した。主な結果は以下である。介護保険制度改定の一つとしてサービス利用料の自己負担割合が1割から所得に応じて2割、3割へと引き上げられたが、特に2割負担の人で負担感が高まっており、中でも要介護4や要介護5で負担感の増加がみられた。経済的な理由で介護保険サービスの利用を抑制した人は要介護5で多い傾向がみられ、ショートステイや通所サービスで経済的な理由による利用抑制の割合が高かった。特養入所申請が要介護3以上に変更されたが、要介護1や2でも特養入所希望者がそれぞれ1割程度いた。介護者が親族や専門職から支援を得ている割合が経年的に減少する傾向がみられ、未婚子による介護や老々介護等の私的支援体制の弱まりとの関連がうかがえたが、その影響を緩和するサービスの効果は十分には検出できなかった。訪問診療や訪問看護といった在宅医療の利用は進展していたが、家族の在宅医療に関する負担感は依然として続いていた。質的調査では、一人暮らしの認知症高齢者、医療・介護を拒否するセルフネグレクト、未婚の息子が介護離職、ひきこもりの息子と同居する要介護高齢者の事例について検討した。これらのケースは民生委員や地域住民の気づきにより地域包括支援センターにつながることができ、地域での見守り活動の重要性が示唆された。しかし、単身高齢者よりも家族が同居しているケースで問題が潜在化し、対応が困難になっていた。
2: おおむね順調に進展している
追跡調査の期間が当初の予定よりも長くなったが、それ以外は予定通りに調査を実施できている。分析も概ね順調に進展している。
当初の計画通り、一般高齢者、要支援・要介護認定者、介護者に対する大規模なサンプリング調査を実施する。これにより、2013年、2016年、2019年の3年間隔の反復横断調査のデータベースを構築し、介護保険制度の改定や介護・医療サービスの効果評価を行う。加えて、今後は、介護を支える介護人材の確保・定着・育成に関する示唆を得るために、介護保険事業所や介護職員に対する調査も実施する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 2件、 査読あり 11件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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