研究課題
本研究事業にて実施した「要支援認定者調査」「要介護高齢者・介護者調査」「介護保険事業所・介護労働者調査」のデータを解析し,主に以下の知見を得た。(1)介護保険サービスの自己負担割合の増額がサービス利用抑制に及ぼす影響を分析した結果,1割負担に比べて3割負担の人ではサービス利用料の負担感が強いものの,利用抑制(月あたりの介護保険給付費単位数にて計測)は見られなかった。一方,2割負担の人では,要介護度が4以上になるとサービス利用が抑制される傾向が示された。(2)要介護認定者の介護者における介護保険サービスの利用希望の未充足(利用希望はあるが利用していない,または利用回数が利用希望回数を下回っている)は,短期入所と通所介護がそれぞれ3割強で,訪問介護は2割,訪問看護は1割であった。サービスによって未充足の関連要因は異なるものの,「認知症による問題行動」や「利用料の自己負担割合の高さ」が多くのサービスで利用希望の未充足につながっていた。特に短期入所の利用希望が未充足であることは,介護者のバーンアウト(燃え尽き症状)に関連していた。(3)介護者の約1割が在宅で医療的ケアを行っていたが,家族が医療的ケアを行うことは介護負担感といったネガティブな影響だけでなく,介護利得感といったポジティブな影響もあり得ること,訪問看護や訪問診療を利用している介護者では,医療的ケアを行うことで介護利得感が高まる可能性が示された。(4)介護施設職員の早期離職が問題になっているが,勤続年数が短い職員に対しては「上司や先輩から指導や助言を受ける機会」「介護能力を適切に評価する仕組み」「能力や資格取得に応じた賃上げ」が就業継続意向を高める可能性が示された。介護人材の確保・定着のためのに「無料職業紹介,マッチング支援」「保育園優先入所」「家賃補助事業」「介護職に対する社会的評価の向上」等の施策の有用性が示唆された。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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