研究課題/領域番号 |
17H02607
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
関川 芳孝 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (10206625)
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研究分担者 |
柴田 学 金城学院大学, 人間科学部, 准教授 (20580666)
安立 清史 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (40192968)
橋川 健祐 金城学院大学, 人間科学部, 講師 (40632691)
橋本 理 関西大学, 社会学部, 教授 (60340650)
竹内 友章 東海大学, 健康学部, 助教 (60755825)
川本 健太郎 立正大学, 社会福祉学部, 准教授 (80580662)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 社会福祉法人 / 地域戦略 / 連携・協業アプローチ |
研究実績の概要 |
社会福祉法人制度改革に焦点を当て、これからの社会福祉法人の役割及び機能について、考察してきた。規制改革会議におけるイコールフッティングの見地から、社会福祉法人制度の在り方が問い直されたことを契機にして始まった改革であったが、現在では地域共生社会の実現に向けて、あらためて社会福祉法人の役割が問われている。本研究では、社会福祉法人制度改革後の動向をフォローしつつ、今後の社会福祉法人の経営戦略のあるべき姿を探ろうとするものである。 ガバナンスの強化のため、会計監査人設置義務付けの対象範囲拡大の是非について調査・検討したが、会計の大きな社会福祉法人であっても、法人本部事務局に会計に明るい職員がいないと、施設レベルにおける会計監査実施に十分対応できる体制が作れないなどの問題が明らかになった。会計監査人による専門的助言が法人経営にとって有益という意見もあったが、費用対効果からみると、会計監査人設置義務付け以外の方法によってガバナンス強化の方法が探られるべきではないかと考えられる。 幾つかの事例研究からは、コミュニティワークの基盤形成に努め、包括的な支援体制の構築に寄与する経営モデルへの転換の必要性が明らかになった。なかでも、震災後の復興支援体制の構築に組織的に連携して地域課題の解決に関わった社会福祉法人の役割を検証しつつ、他の非営利法人との連携が課題であることがみえてきた。 社会福祉協議会などにおいて組織される社会福祉法人が経営する施設種別ごとの事業者組織が、連携・協業のプラットフォームを構築している場合が少なくないが、この組織の在り方が、結果として他の非営利法人との連携にまで広がらない要因の一つとなっているように思われる。さらに事例研究をつうじて、多様なステークフォルダーの参加を可能とするプラットフォームづくりに、社会福祉法人がどのように寄与できるのか、明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
非営利組織の経営モデルについての理論研究は、社会的企業についての国際比較に取り組み、学会報告においても評価をえることができた。また、非営利法人としての社会福祉法人の経営の在り方については、ドラッカーおよびサラモンの研究にもとづきつつ、制度の枠組みを超えて、非営利セクターにおいて存在価値が認められる経営戦略の展開が必要となることが確認できた。 しかしながら、取り組んで来た幾つかの事例研究を、理論研究および政策研究と統合させ、実践的な経営モデルとして提示できるまでには至っていない。連携・協業アプローチとして、CSV(Creating Shared Value)の経営モデルを参照しながら、社会福祉法人の経営戦略を検討しているところである。地域福祉を推進する立場から、社会福祉法人の存在価値を高める制度改革の再検討が必要と考えているが、十分にまとめきれていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題としては、SDG経営などの先行事例を研究し、非営利法人のみならず営利法人とのネットワーク形成に必要なコミュニティワークの実践方法の研究に取り組む予定である。 その上で、研究分担者が取り組む事例研究の成果を共有・総括し、連携・協業アプローチによる社会福祉法人の新たな経営モデルを提示し、地域の福祉基盤としての社会福祉法人の役割および機能を明らかにする。 新型ウイルス感染症の拡大の影響から、フィールドワークおよび社会福祉法人関係者へのヒアリングができない状況にあり、研究会の開催も中止となった。定期的にオンライン会議を開催し、研究成果の総括に取り組みたい。 研究の最終年度であることから、これまでの研究成果をとりまとめ、学会報告および学会誌等への論文の掲載に取り組む予定である。その上で、社会福祉法人制度の展望と課題について報告書としてとりまとめ、出版する予定である。
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