研究実績の概要 |
1.家庭内外での活動の類型化と健康および主観的well-being(WB)への影響 全国高齢者パネル調査(JAHEAD)の2012年新規対象者(60歳以上1,324人)のデータを横断的・縦断的に分析した。家事、介護、孫の世話、有償労働、ボランティア、趣味、グループ活動、友人らとの対面交流の8種類の活動頻度で潜在クラスモデル分析を行った結果、2012年は5類型、2017年では4類型が得られた。全活動が低頻度の非活動群は5年後も非活動的な傾向があり、健康および主観的WBが最も低い一方、有職かつ仕事以外の活動にも高頻度で参加していた有職・アクティブ群は5年後にグループ活動中心に高頻度に参加している確率が高く、健康・WBが高かった。有職・アクティブ群に比べると、仕事中心群は5年後に非活動群になる確率が高かった。 2.仕事からの引退年齢の上昇と引退後の社会活動への参加 JAHEADの1999年(T1)と2002年(T2)、これらとは別コホートに実施した2012年(T1)と2017年(T2)の統合データ(N=3,493、平均年齢72.2歳)を用いた。T2の社会活動(ボランティア、趣味・稽古事、グループ活動、友人等との交流)の頻度を目的変数とする多項ロジスティック回帰分析において、追跡期間中の就労変化とT1年齢の主効果および交互作用効果を、T1の諸変数を調整して検討した。その結果、就労から非就労に変化した「完全引退」者は、「就労継続」者に比べてT2時に週1回以上のグループ活動に参加していたが、ボランティアと趣味・稽古事では、完全引退のポジティブな効果は若い年齢層(60代)でしかみられず、高齢で退職した場合は一部の社会活動への移行が難しいことが示された。友人等との交流については就労変化の影響はなく、フルタイムから短時間就労に変化した「部分引退」が社会活動を促す効果はみられなかった。
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