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2019 年度 実績報告書

帰納的学習を介した規範の進化と維持:新たな実験パラダイムの構築を目指して

研究課題

研究課題/領域番号 17H02621
研究機関北海道大学

研究代表者

竹澤 正哲  北海道大学, 文学研究院, 准教授 (10583742)

研究分担者 堀田 結孝  帝京大学, 文学部, 准教授 (90725160)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード協力の進化 / 規範の内面化 / 罰
研究実績の概要

規範とは、社会の中で共有された暗黙のルール体系であり、行為者は他者との相互作用や、他者の行動の観察を通じて帰納的にルールを学習していく。だが従来、進化ゲーム理論を用いて規範の進化が研究される際には、こうしたルールの帰納的学習という側面が削ぎ落とされがちであった。本年度は罰を通した規範の学習と内面化に焦点を充てた。規範が内面化されていく際、たとえば規範から逸脱した行動を取ると、第三者から罰を受けることであることから規範を学習していく。従来のモデルでは、罰を受けると即座に規範に合致した行動を取る行為者が想定されていたが、実際の学習プロセスは量的になだらかに変化しており、また罰を受けてもすぐに反応して行動を変える個人から、なかなか学習をしない個人まで多様なはずである。そこで、規範を内面化するマイクロな学習アルゴリズムを計算論的に定式化した上で、進化ゲームモデルを用いた分析を行った。そして罰を受けた後でどのくらい大きく反応するかという感受性の個人差を遺伝子とみなした進化ゲームモデルを構築し、理論的な分析をおこなった。その結果、罰に対して全く反応せず、規範を学習しない状態からスタートすると、当初は突然変異の蓄積によって罰の感受性が緩やかに増加し、ある閾値を超え始めると、感受性の高さに対して正の淘汰がかかり始め、行為者は罰を受けたあとで規範を遵守する行動を内面化するようになった。そして罰行使者と罰に対する感受性が共進化する結果、罰によって協力が維持される状態へと移行することが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予定されていたコンピュータ・シミュレーション等も順調に進捗しており、概ね予想された通りの結果が得られている。実験室実験の計画も進んでおり、順調に進展している。

今後の研究の推進方策

順調に進捗しており、来年度に予定していた実験を実施する予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] 心理学研究の新しいかたち CHANGE we can believe in ―特集号の刊行にあたって―2020

    • 著者名/発表者名
      三浦麻子, 友永雅己, 原田悦子, 山田祐樹, 竹澤正哲
    • 雑誌名

      心理学評論

      巻: 62 ページ: 197-204

    • DOI

      10.24602/sjpr.62.3_197

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 社会規範の維持と変化を説明する:進化社会科学における未解決の問い2019

    • 著者名/発表者名
      竹澤正哲
    • 雑誌名

      人工知能学会誌

      巻: 34 ページ: 168-175

    • 査読あり
  • [学会発表] Risk aversion and prosocial preferences: Psychological adaptations in uncertain natural environments2019

    • 著者名/発表者名
      Homma, S, Takezawa, M
    • 学会等名
      The 14th annual conference of the European Human Behavior and Evolution Association
    • 国際学会
  • [学会発表] Does teaching promote the cumulative cultural evolution?: Simulations with a computational model of teaching2019

    • 著者名/発表者名
      Nakata, S, Takezawa, M
    • 学会等名
      The 14th annual conference of the European Human Behavior and Evolution Association
    • 国際学会
  • [学会発表] 負の予測誤差とリスク下の意思決定の関係: 強化学習の進化モデルを用いた検討2019

    • 著者名/発表者名
      本間祥吾, 竹澤正哲
    • 学会等名
      第60回日本社会心理学会大会
  • [学会発表] 文化伝達の中から創発する構造 ―非言語課題を用いた実験による検討―2019

    • 著者名/発表者名
      中田星矢, 竹澤正哲
    • 学会等名
      第60回日本社会心理学会大会
  • [学会発表] 罰に対する感受性と協力の進化2019

    • 著者名/発表者名
      土田修平, 竹澤正哲
    • 学会等名
      第60回日本社会心理学会大会
  • [学会発表] 予測誤差とリスク下の意思決定:強化学習エージェントの進化シミュレーション2019

    • 著者名/発表者名
      本間祥吾, 竹澤正哲
    • 学会等名
      第12回日本人間行動進化学会
  • [学会発表] 階層構造の創発における文化伝達の役割:繰り返し学習を用いた実験的検討2019

    • 著者名/発表者名
      中田星矢, 森瑞希, 竹澤正哲
    • 学会等名
      第12回日本人間行動進化学会
  • [学会発表] 環境の厳しさが社会規範の厳しさに与える影響:空間的自己相関を統制した再分析2019

    • 著者名/発表者名
      行平大樹, 竹澤正哲
    • 学会等名
      第12回日本人間行動進化学会

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公開日: 2021-12-27  

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