研究課題/領域番号 |
17H02628
|
研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
稲増 一憲 関西学院大学, 社会学部, 教授 (10582041)
|
研究分担者 |
三浦 麻子 関西学院大学, 文学部, 教授 (30273569)
多湖 淳 神戸大学, 法学研究科, 教授 (80457035)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | マスメディア / インターネット / 国際関係 / 世論 |
研究実績の概要 |
前年度に掲載が決定していたマスメディアの信頼の測定項目による差異について扱った論文が発表された。また、この論文では項目の差異による影響の存在を指摘するに留まっていたが、ベイズ統計モデリングによって補正することで、この問題に対して事後的に対処する方法について検討を行った。この研究については、2018年度日本選挙学会研究会において発表するとともに、「評定尺度法の反応ラベルによる影響の補正:公的組織への信頼を題材として」というタイトルの論文としてまとめ、社会心理学研究誌への掲載が既に決定している。 加えて、メディアへの接触変数の精緻化のため、過去に行われてきた社会調査の項目を整理し、Web調査実験を用いて、妥当性の高い調査項目を作成することを試みた。その結果、世論研究の分野においては、ジャンルを限定しないテレビ視聴時間を項目として用いることは好ましくないと考えられること、週単位でのニュースや新聞の接触頻度を具体的な日数を挙げて尋ねる形式の妥当性が高いこと、具体的な番組視聴について尋ねる形式は生活時間帯の影響を強くうけ、平日夜および休日のニュース番組接触のみが、有効な項目であることなどが明らかになった。この結果については、日本社会心理学会第59回大会において発表した。 加えて、2018年12月に日本の海上自衛隊の哨戒機に対して、韓国海軍の駆逐艦がレーダーを照射した事件が起こったため、12月末、1月、3月の3回においてWeb調査データを取得し、事件に対する日本国民の反応について調べた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メディア接触の影響を検証するためには、接触の効果を測る妥当性の高い質問項目が不可欠といえる。本研究課題においては、過去の社会調査において用いられてきた質問項目を収集するとともに、Web調査実験を繰り返すことで、質問項目の妥当性の検証を行うことができた。これは2019年度以降にメディアへの接触効果を検証する研究を行うための準備段階であったが、これに関連した研究成果として、査読付き学会誌に2本の論文が掲載されたことは予想外の成果といえる。 一方で、2018年12月に本研究課題において極めて重要な事象といえる日韓レーダー照射事件が発生したため、予定を変更し、この事件に関連した調査データを取得することとした。これにより、2018年度は科研申請当初に計画していた仮想状況を設定した上でのサーベイ事件という形式でのデータ取得を行うことはできなかった。しかし、通常時においては取得することのできない貴重なデータを取得し、研究成果を発表することは、重要なことと考えられる。 このように、実際の国際関係を取り巻く状況や研究の進展に伴い、当初の予定とは異なる形でのデータ取得や成果発表を行う状況となっているが、国際関係におけるメディアコミュニケーションの影響を検討するという本研究の課題自体に照らして重要な知見やデータが得られており、進捗状況には問題ないと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
まずは2018年度に取得した日韓レーダー照射事件に関する3回の調査データの分析を行う。それとともに、この事件に関連した2018年12月から2019年3月にかけてのマスメディア・インターネット上での言説について、テキストデータを取得し、調査データと結びつけることで、同時期におけるメディア接触が、日本の有権者の韓国への態度にもたらした影響について検証を行う。この成果については、2019年度の日本社会心理学会で発表を行うとともに、早期に論文化し、査読付き学術誌への掲載を目指す。 さらに、2019年9月以降に、当初予定していた通り、多様化するメディア環境における議題設定効果について、検討するためのパネル調査を実施する。 また、それらと並行して、メディア・コミュニケーション研究を俯瞰する書籍の執筆が進行中であり、こちらについても2020年中には出版を目指す。
|