研究課題/領域番号 |
17H02628
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
稲増 一憲 関西学院大学, 社会学部, 教授 (10582041)
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研究分担者 |
三浦 麻子 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (30273569)
多湖 淳 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (80457035)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 外交 / インターネット / マスメディア / 情報環境 |
研究実績の概要 |
まず、人々がSNSならびにWEB上の新聞記事を通じてどのようなニュースに接触しているかを確認するため、2020年12月にクラウドソーシングサービス「ランサーズ」上で100名を対象に調査を行った。具体的には、3か月以内に触れた国内外のニュースを自由回答形式で3つずつ挙げてもらった。 次に、予備調査で挙げられた「トランプ氏支持者が議会乱入」「コロナ変異種」「英欧FTA暫定発効」「周庭氏に実刑判決」「ナゴルノ紛争終結」「菅首相会食」「桜を見る会収支不記載」「新型コロナで現職国会議員急逝」「大阪都構想は否決」「吉川元農水収賄容疑」という国内外のニュースについて、人々の接触を測定するWEB調査を行った。調査票はQualtricsを用いて作成し、2021年3月に日経リサーチ社の登録サンプルを対象として行った。回答者数は4850である。この調査の参加者はランダムにTwitter群、WEBニュース群(時事通信の記事)に振り分けられており、それぞれ該当するメディアでの10の記事(投稿)を示した上で、(その記事そのものではなく)扱われたニュースに接触しているかどうかを測定した。 この調査の第1の目的は人々がインターネットを通じてどの程度国内外のニュースに触れているのかを確認することであるが、それに加えてSNS・WEB上の新聞記事に接触させることで、人々の外交政策に対する認識にどのような影響がもたらされるのかの検討を行うことができるデザインとなっていた。このデータを分析した結果については、2021年度中にまとめ、2022年度に行われる学会にて発表を行う予定である。 さらには2019年度に実施したマスメディアの影響力に対する人々の認識を扱った実験データを分析した。これについては2021年5月8日に実施された日本選挙学会で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、人々のマスメディア・インターネットとの関わりについての測定を精緻化する研究を実施した上で、2017年度・2018年度の日本社会心理学会において報告を行った。このうち、マスメディアへの信頼に関する研究においては、2本の論文として社会心理学研究誌に投稿を行い、査読を経て掲載された。次に、メディアの影響力についての人々の認識について、情報源ごとの影響力の差異に関する研究は2018年度の日本心理学会、どのような人々が影響を受けやすいと認識されているかについての研究を2020年度に行い、2021年5月の日本選挙学会にて報告を行った。また、韓国レーダー照射事件についてのパネルデータについて、2019年度の日本社会心理学会において研究発表を行った。さらには、大学院生との共同研究の成果が2019年度に社会心理学研究、研究員との共同研究による結果が2020年度にAsian Journal of Social Psychologyといった国内外の査読付き論文誌に掲載された。 既に取得し、学会等での報告を準備しているデータとして、複数のマスメディア・ウェブメディアの議題設定効果を測定するための調査(2020年3月に実施)、ならびに人々がSNS・WEB上の新聞記事を通じてどの程度国内外のニュースに触れているのかを確認する調査実験(2021年3月に実施)がある。これらのデータを分析した結果については、2021年度以降の日本社会心理学会や日本選挙学会等で発表を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に取得するデータとしては、旗下集結と議題設定効果についてのWEB調査実験が挙げられる。この実験については本来対面で実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大により対面実験が困難である状況を踏まえ、オンラインで実施可能なWEB調査実験に置き換える。 これまでに取得してきたデータを用いた研究の発信としては、人々のメディアの影響力の認識に関する実験については、2021年5月の日本選挙学会での報告に対する議論を踏まえ、ブラッシュアップしたものを2021年度中に政治学系の専門学術誌に投稿する。さらには、マスメディア・ウェブメディアの議題設定効果についての研究、ならびにSNS・WEB上の新聞記事を通じた人々のニュース接触についての研究については、2021年度中に分析を行い、2022年度以降に国内外で開催される学会にて報告を行う。 また、1920年代から1980年代までのメディア効果論の展開を踏まえたうえで、現代のメディア環境について議論した『マスメディアとは何か』というタイトルの書籍の執筆を進めており、2021年度中には出版される予定である。この書籍には本科研研究を通じて得られた知見ならびに、文献レビューの成果を組み込む。
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