研究課題/領域番号 |
17H02631
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
針生 悦子 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (70276004)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 言語 / 発達 / 乳児 / 文フレーム / 動詞 / 表情 |
研究実績の概要 |
乳児の言語学習の実験的研究はこれまで,オブジェクト(視覚刺激)と言語ラベル(聴覚刺激)を対呈示し,乳児が両者を結び付けられるかを検討する,といったものがほとんどであり,言語を発する“人”は実験事態から排除されてきた。しかし,言語を習得しつつある子どもが生きる世界において,“人”は,言語(として学ぶべき音声)を差し出す存在であり,言語の学習はそもそも “人(の意図,感情,ふるまい)”についての理解を前提としている。そこで本研究課題は、乳幼児期の子どもが、“人(意図、感情、ふるまい)”をどのように理解しながら,そこから呈示される音声をどのように分析し,それを言語ラベルとして学んだり言語ラベルとしては学ばなかったりしているのかについて検討することを目的とした。 本年度は,まず,“人”についての理解という点では,生後6か月の子どもを対象に実験を行い,この時期の子どもは既に,怒り表情を示す人物は他者に対して協調的な行動はとらない,というように,人のとりうる行動をその表情からある程度予測していることを明らかにした。また,話者の発する音声の分析という点では,既に助詞を手がかりとして名詞を統語的にカテゴライズし始めていることがこれまでの研究で確認されている,生後15か月の子どもを対象に,動詞の接尾辞を手がかりとして動詞を統語的にカテゴライズしているかについて検討した。しかし,15か月児が接尾辞を手がかりとして動詞を統語的にカテゴライズしていることを示す証拠は得られなかった。さらに,そのようにして呈示された音声からの言語ラベルの学習という点では,生後12か月児を対象に実験を行い,このころになれば,「~だよ」といったラベルづけ文フレームを含む発話と,そのような文フレームを含まない発話をおおよそ区別して,適切に,オブジェクトのラベルを学習するようになり始めていることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定されていた実験などを予定されていたペースで遂行できているため。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度に得られた知見については,学会などで成果を公表し,論文化を進めるとともに,さらに踏み込んだ検討が必要になった部分については,取り上げる材料の範囲の限定や,対象月齢の拡張を行って,さらに実験を積み上げていく。
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