研究課題/領域番号 |
17H02632
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤村 宣之 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (20270861)
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研究分担者 |
石橋 優美 共立女子大学, 家政学部, 助教 (60804797)
鈴木 豪 横浜商科大学, 商学部, 講師 (40802905)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 概念的理解 / 教科学習 / 教育心理学 / 探究 / 協同 |
研究実績の概要 |
本研究では,小学生から高校生を対象とした実験・面接・調査により概念的理解が深化するメカニズムを明らかにし,そのメカニズムに依拠した授業を小学校~高校の複数教科で組織し,各児童・生徒の概念的理解の深化に及ぼす効果と深化のプロセスを明らかにする。 (1) 多様な思考の関連性や因果性の探究が概念的理解の深化に及ぼす効果 多様な思考の間の関連性や因果性の探究を通じて多様な知識が関連づけられて概念化・抽象化され,教科内容の本質的理解に迫ると想定し,児童・生徒を対象とした個別実験・面接研究を実施した。高校生を対象とした研究では,数学に関する生徒の概念的理解を促進するために,複数の解や解法の共通点を考えた後に「なぜその共通点があるのか」や「その共通点はどのようなものか」といった追加発問を行うことが効果的かどうかを検証することを主目的に,個別面接による研究を実施した。また,小学校5年生を対象とした個別実験研究では,社会科学的事象に関する概念的理解を促進するために,産業立地を題材に因果追究型質問を行って判断の理由づけを探究させた。その結果,生産者視点に立たせたうえで児童の回答した要因だけで当該事象を説明できるかを問う条件では,児童が言及した内容の詳細な説明等を求める条件に比べて,社会的要因を考慮した理解がより深まることが示唆された。 (2)各教科の授業における「関連性・因果性探究型発問」の効果 中学校・高校の複数教科の授業において,クラス全体の協同探究場面に多様な思考の間の関連性や因果関係を考える「関連性・因果性探究型発問」を設定し,発問の前後での変化を発話やワークシートの記述の内容から分析した。その結果,例えば,国語科の場合,登場人物の心情を象徴するものとその根拠を探究させる,同一対象の場面間の変化に着目させるといった発問を通じて,各生徒の概念的理解が深化する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概念的理解の深化メカニズムに関して,個別実験・個別面接による研究を通じて,統制された条件のもとで,理解の深化の契機としての「多様な思考の関連性・因果性の探究」とその効果についての研究が進み,また複数教科の授業場面において,そこで見いだされた深化の契機(協同探究場面における関連性・因果性探究発問)を生かした授業構成のプロセスと効果について検討が進められているため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究を継続させて個別面接・個別実験による結果の分析を進めるとともに,本年度の研究をさらに発展させて,多様な思考を関連づけて,原理・目的・意図など,「諸事象の本質に迫る共通性」を探究することが児童・生徒の概念的理解の深化に及ぼす効果と深化のプロセスを明らかにする実験・面接・調査研究を推進する。以上の内容と関連させて,各教科の授業場面において「本質追究型発問」が個々の学習者の概念的理解の深化に及ぼす効果を検討する。
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